香川県丸亀市沖の本島で暮らす若手漁業者夫婦が進めている新事業で養殖を始めたマサバが8日に“デビュー”する。人工種苗から育てて寄生虫アニサキスのリスクを低減し、刺し身など生で食べられるのが売り。夫婦らが運営するレストランで棒ずしやマリネなど多彩なメニューに仕立てて提供する計画で、名前は「海を休ませるサバ」。水産業復権を目指す夫婦の思いを乗せ、島の新名物への道を歩み始める。


お披露目会でサバを使ったメニューを説明する佑紀さん=香川県丸亀市本島町

お披露目会でサバを使ったメニューを説明する佑紀さん=香川県丸亀市本島町


 サバ養殖は、本島生まれで中学卒業から漁師を続ける大石一仁さん(27)が妻の佑紀さん(27)と運営している「海を休ませる水産商社『塩飽フィッシャリーズ』」の中核事業の一つ。昨年6月に和歌山県から人工種苗の稚魚を仕入れ、本島・笠島地区の北約500メートル沖に設置した1基5メートル四方(深さ6メートル)の海面いけすで育ててきた。
 「海の貧栄養化や漁業者の乱獲で漁獲量が減っている」との危機感から立ち上げた養殖事業で、一仁さんは「稚魚からの養殖は人間の赤ちゃんと同じで毎日手をかけなければならない。養殖を始めて50日間は漁に出ず稚魚の世話をした」と話す。子育てもしている2人は「丁寧に育てれば決まった収入が見込め、安定した事業になる。取れないなら育てるだけ」。1期目の今シーズンは1500匹ほどを島内限定で販売する予定だが、販路を開拓しながら生産量を増やす計画も練る。


「海を休ませるサバ」を使った料理の一例

「海を休ませるサバ」を使った料理の一例


 2月28日には泊港の本島観光案内所内にある飲食店「本島スタンド」の休業日に開いている「海を休ませるレストラン」で関係者ら向けのお披露目会を開催。佑紀さんとともに、丸亀城の「城泊」などにも携わるバリューマネジメント(大阪市)の石井之悠シェフが腕前を披露し、「安心して使える食材であることが一番の魅力。脂の乗りもほかのブランドサバと遜色はなく、ポテンシャルは高い」とお墨付きを与えた。
 デビュー後は土、日曜を中心にサバのメニューを加えたディナー営業も開始する。完全予約制。問い合わせなどは、インスタグラム〈@shiwaku_honjima〉へ。

(四国新聞・2024/03/04掲載)



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