小豆島から船で渡れる小さな島があることをご存じだろうか。沖之島(香川県小豆郡土庄町)は、同町の小江集落の沖約170メートルのところにある。静かで美しい島の集落は現在、瀬戸内国際芸術祭の夏会期(8月25日まで)に合わせて作品の展示会場にもなっている。島から島へ、およそ3分間の短い船旅に出てみよう。


小江集落から沖之島へ向かう渡し船。この日は瀬戸芸の来場者も多く見られた


 沖之島と小江集落は目と鼻の先だが、海峡は「小江の瀬戸」などと呼ばれ、潮の流れが速い。渡し船は土庄町が運営しており、定員は船長を含めて11人。瀬戸芸期間中の平日は18便、日曜日と祝日は17便が運航されている。

 四国地方が梅雨明けした翌日。瀬戸芸目当ての若者たちに混じって、船に乗り込んだ。船頭の島本博幸さん(69)によると、沖之島の人たちは皆自分の船を持っているが、渡し船は通院や通学、買い物などに使われているという。島本さんの子どものころは「潮だまりの時間に対岸まで泳いで遊んでいた」とか。


船着き場とは反対側の海岸


 沖之島側から小さな船がやってきて乗り込むと、対岸まではあっという間。船着き場に近いところに集落があり、瓦屋根のきれいな家々が立ち並ぶ。

 韓国のクー・ジュンガさんの作品「OKINOSANG/元気・覇気・卦気」は、海岸の岩壁などにクリスタルダイヤモンド6千個を設置した作品。太陽の光が当たるとクリスタルダイヤモンドがキラキラと輝き、島の美しさをより一層引き立てる。船着き場とは反対側の海岸は、たくさん並んだ消波ブロックにクリスタルがちりばめられている。


防波堤に干されたヒトデ。いい肥料になるという=いずれも土庄町


 近くには、3軒しか住んでいないという小さな集落も。海岸沿いには、ヒトデが干してあった。これを野菜などの肥料にすると、とてもおいしくできるそうだ。島の人たちの暮らしを垣間見た。

 では、小豆島へ戻ろう。かつてはこの船に花嫁が乗り、嫁いでいく姿も見られたという。太陽はまだ高かったが、「瀬戸は日暮れて 夕波小波」と小柳ルミ子さんの名曲「瀬戸の花嫁」が自然と頭に浮かんだ。初めて来たのになぜか懐かしい船旅だった。

(四国新聞・2019/07/30掲載)

沖之島



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