洋画家猪熊弦一郎(1902~93年)が、晩年を過ごした米ハワイでの作品を集めた企画展「猪熊弦一郎展 ホノルル」が、香川県丸亀市浜町の市猪熊弦一郎現代美術館で開かれている。ハワイの豊かな自然や宇宙への関心から描かれた約50点の作品のほか、アトリエ写真などの資料約250点を紹介。色彩鮮やかな作品が多く、大病から再出発した猪熊の前向きな心情がうかがえる。6月2日まで。


色彩豊かな猪熊作品が並ぶ企画展「猪熊弦一郎展 ホノルル」=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館

色彩豊かな猪熊作品が並ぶ企画展「猪熊弦一郎展 ホノルル」=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館


 猪熊は高松市生まれ。東京、パリ、ニューヨークなど拠点を移しながら活動していたが、73年に脳血栓を患い、約20年に及ぶニューヨーク生活に区切りをつけた。一方、翌年に降り立ったハワイの青空に勇気づけられ、「アメリカに又(また)第一歩始まる。」(猪熊の日記から)と再出発を決意した。
 企画展では、大都市ニューヨークから豊かな自然に囲まれたハワイへ制作環境を移したことをきっかけとした表現の変化に着目。ハワイで見た虹にひらめきを得て描いたとされる76年の作品「Rainbow Z1」や宇宙への関心から制作したという作品などを並べた。ニューヨーク時代の幾何学的な画面構成を引き継ぎつつ、明るい色調に仕上げられた作品も多い。
 ハワイに拠点を移したのはちょうど半世紀前の74年で、猪熊は当時70歳を過ぎていた。担当する竹崎瑞希学芸員は「大きな病を乗り越え、再出発する中で生み出した鮮やかでエネルギーに満ちた作品が新型コロナウイルス下から再起を目指すポスト・コロナの私たちを勇気づけてくれるのではないか」と話している。
 開館時間は午前10時~午後6時。月曜休館(6日は開館し、翌火曜日休館)。所定の観覧料が必要。問い合わせは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館〈0877-24-7755〉。

(四国新聞・2024/05/06掲載)


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館



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