香川漆芸の作家で日本工芸会正会員の北岡省三、松原弘明、石原雅員、北岡道代による合同展「北岡省三 うるし4人展」が、香川県坂出市駒止町のかまどホールで開かれている。継承される匠の技と豊かな感性で生み出された逸品の数々が、訪れた人たちを魅了している。26日まで。


作品を解説する北岡省三(写真中央)=香川県坂出市駒止町、かまどホール


 北岡省三と松原、石原は香川漆芸三技法の一つ「彫漆(ちょうしつ)」の重要無形文化財保持者(人間国宝)だった故音丸耕堂に師事。日本伝統工芸展などで受賞を重ね、現在は制作の傍ら県漆芸研究所で後進の育成に当たっている。父・省三の下で研さんを積む道代は今年同研究所の研究員課程を修了し、多くの公募展で活動の幅を広げている。
 初となる4人展は、箱や盆、アクセサリーなど計約100点を展示販売。このうち省三の「乾漆(かんしつ)線文盛器」は、なだらかな曲面に卵の殻を細かく砕いて貼り付け、流麗な線をあしらった作品。背景の深緑のグラデーションによって爽やかな雰囲気を醸し出している。
 松原のクジャクの羽をモチーフにした「彫漆(ちょうしつ)孔雀(くじゃく)文菓子器」は、塗り重ねた白漆に蒔絵(まきえ)で金を施し、華やかで陰影のある器に仕上げている。また、石原は漆に貝やガラスなどの素材を組み合わせる独自の技法を追求。香木をいれるための箱「堆漆(ついしつ)天叢(あまのむら)雲沈香箱(くもじんこうばこ)」にはアクリル板を加え、堆漆によるストライプ状の文様と合わさって現代的なデザインとなっている。
 道代の「乾漆蒟醤盆(きんまぼん)『春宵(しゅんしょう)』」は、点彫りによって月夜に照らされる夜桜の優しい輝きを表現。省三は「香川漆芸の幅広さや作家の個性が存分に表れている。3技法を身近に感じてほしい」と話している。
 入場料は一般300円ほか。18日午後2時から松原のギャラリートークがある。問い合わせはかまどホール、電話0877-46-2178。

(四国新聞・2024/05/17掲載)



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