金刀比羅宮、国重文に 本宮など12棟 神仏分離対応示す 文化審答申
国の文化審議会(島谷弘幸会長)は17日、金刀比羅宮(香川県仲多度郡琴平町)の本宮や別宮など12棟を重要文化財に指定するよう、盛山正仁文部科学相に答申した。明治初頭の神仏分離で仏教色を排し、神社として再興するため境内を再編しており、明治政府の宗教政策への対応を示す貴重な事例。複合社殿の本宮と別宮は独自の細部意匠を備え、両宮をつなぐ渡り廊下など一連の施設と共に優れた景観を形成していることも評価された。
答申が認められれば、県内の重要文化財(建造物)は2022年の鍋島灯台(坂出市)以来で32件目(65棟)。金刀比羅宮では江戸時代に建てられた奥書院や旭社など3件4棟が重文(建造物)に指定されているが、明治以降の建造物が重文指定されるのは初めて。
今回答申された建造物は「本宮本殿・中殿・拝殿」「本宮神饌殿(しんせんでん)」「本宮直所(じきしょ)」「別宮本殿・中殿・拝殿」「別宮神饌殿」「別宮直所」「祓所殿(ばつじょでん)」「南渡殿(みなみわたどの)」「神楽殿」「御炊舎(みかしぎしゃ)」「神輿(しんよ)庫」「神庫」の計12棟。いずれも1874~78(明治7~11)年に建てられた。
金刀比羅宮はかつて「金毘羅大権現(こんぴらだいごんげん)」として神仏混交の寺院でもあったが、68(同元)年の神仏分離令から神社として再興。組織の再編に合わせ、境内も大規模に改編した。
県教委などによると、78(同11)年建築の本宮は仏教色をなくし、壁面や天井に木地蒔絵(まきえ)を施した複合社殿。拝殿から本殿に向かって床高を上げることで格式を高め、破風(はふ)を多用した屋根も荘厳で優美な雰囲気を醸し出している。本宮本殿などを修理する際に本宮からご神体を移す別宮も本宮に準じた高い格式で、神饌殿や直所など付属施設を伴う構成も同じという。
また、両宮をつなぐ全長42メートル、高さ2・2メートルの長い渡り廊下「南渡殿」は金刀比羅宮独特の形式。同時期に建てられた神楽殿、御炊舎など各殿舎も残り、同審議会は「優れた社頭景観を呈するとともに、神仏分離による境内改編の様相を伝え、歴史的に価値が高い」としている。
(四国新聞・2024/05/18掲載)