瀬戸内海国立公園の父と称される小西和(かなう)(1873~1947年)の直筆書簡が新たに見つかった。東かがわ市歴史民俗資料館(香川県東かがわ市引田)が同公園指定90周年記念として開催している企画展「玉藻の海の賜物(たまもの)」で初公開されている。書簡は外国から帰国中、太平洋を横断する船上から同郷の友に郵送した絵はがきで、小西の交友関係を示す貴重な資料となっている。


小西が同郷の猪熊に宛てて送った書簡


 小西は寒川郡名村(現さぬき市長尾名)出身のジャーナリスト、政治家で、1911(明治44)年に著した「瀬戸内海論」で「瀬戸内海を世界の財産として活用すべき」と主張。国会議員として政府に瀬戸内海の国立公園化を継続的に提案し、31(昭和6)年に「国立公園法」が成立、その3年後に瀬戸内海が初の国立公園に指定された経緯がある。
 瀬戸内海論の復刻版と共に公開中の書簡は、東かがわ市教委によると、今年に入って市内の個人宅で発見された。14(大正3)年に同市松原の白鳥神社に隣接する県指定有形文化財「猪熊家住宅」(通称猪熊邸)の70代当主・猪熊信男(1882~1963年)に宛てた絵はがきとなっている。
 内容は、大正天皇の即位に関する行事に携わるため京都にいた同郷の猪熊に訪問の約束を取り付けるもので、差し出しに「太平洋横断航行中 郵船コリア丸にて」とあることから船上から出したことがうかがえるという。


東かがわ市ゆかりで瀬戸内海と関わりのある資料が並ぶ企画展=同市引田、市歴史民俗資料館


 企画展では猪熊が帰郷後の1947(昭和22)年に作成した「東讃諸町村國立公園追加編入嘆願書」も展示。東讃地域も国立公園に含めるよう求めたもので、因果関係ははっきりしないものの、56(同31)年の第2次拡張で現在の東かがわ市域などが初めて指定された。
 また、相生地区(現東かがわ市馬宿)出身で江戸期の発明家・久米通賢の「大坂峠の測量図」や、同市引田の安戸池で発祥したハマチ養殖の草創期の出荷内容などを記録した「安戸池概要」など、同市ゆかりで瀬戸内海と関わりのある資料の数々も並んでいる。
 同市教委は「90周年の節目の年に貴重な資料が見つかった。瀬戸内海の素晴らしさを再認識してもらう機会になれば」としている。企画展は6月26日まで。開館時間は午前9時から午後5時まで。火曜休館。問い合わせは東かがわ市歴史民俗資料館、電話0879-33-2030。

(四国新聞・2024/05/25掲載)



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