5年ぶりに開かれた37回四国こんぴら歌舞伎大芝居。期間中は色とりどりののぼりが来場者を迎え、街並みを彩った。のぼりを1985年の第1回公演から手がけているのが琴平町の工房「染匠 吉野屋」。香川県の伝統工芸「讃岐のり染」の技法を用いて鮮やかな色合いを演出している。この技法をトートバッグの色付けに応用し、オリジナル・バッグを制作しようという体験制作が人気を集めている。


好きな色を乗せていく。のりの境目をしっかり塗るのがこつ=琴平町、染匠吉野屋


 讃岐のり染の起源は定かではない。一説によると、江戸時代に高松城下の紺屋町を中心に多くの染物屋が軒を連ね、藍染めを中心とした着物制作に用いられたとされる。もち米からできたのりを、防染のため染色しない部分に置いて染める技法で、プリントでは出せない色と優しい風合いが特長だ。
 体験制作には、県内外から訪れた家族や友人仲間でにぎわっている。色付けするのは縦約25センチ、横約30センチのバッグ。模様は、古来から伝わる日本ならではの文化、デザインがモチーフ。ウサギや八咫烏(やたがらす)などユニークな家紋は、インパクト十分。
 まず、模様にのり付けしたものに色付け。赤や青、紫など約20種類の染料を混ぜ合わせ、オリジナルの色を作ることもできる。端切れの上で試してから、のりとのりの間を埋めるように塗っていく。同工房4代目の大野篤彦さんによると、のりの境目にしっかりと色を入れるのが上手に仕上げるポイントという。
 色付けが終わったらドライヤーで乾かして体験は終了。自宅で水に3時間ほど漬け、のりを落として乾燥させたら世界に一つだけのバッグの完成だ。コンパクトなサイズのため、ランチバッグとして活用する人が多いそうだ。


讃岐のり染はプリントでは出せない色と風合いが魅力


 また、同工房ではこんぴら大芝居ののぼりの柄を使った讃岐のり染バッグ「KONBAG」も制作、販売。一点物で、面によって違う表情が楽しめるとあって人気を集めている。
 大野さんは「こんぴら参りと併せて色付け体験もして琴平の歴史と文化に触れてほしい」と呼びかけている。
 料金は3500円から、所要時間は40分~1時間。1週間前までの予約を推奨。問い合わせは「染匠 吉野屋」、電話0877-73-5846。

(四国新聞・2024/05/25掲載)



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