坂出市出身の現代美術家、南条嘉毅(よしたか)さん(42)の個展「南条嘉毅展-透ける表層、漂う大地-」が6日から、同市寿町の市民美術館で開かれる。坂出の製塩の歴史を題材にしたインスタレーション(空間演出)をはじめ、土や鉱物を用いた絵画など、活動初期の作品から新作まで60点余りを四つのテーマで展示。古里で開く初の個展に南条さんは「約20年の歩みを地元の方々にぜひ見てほしい」と意気込んでいる。


「約20年の歩みを見てほしい」と話す南条さんと、最初期作品「Line―軌跡―」=坂出市寿町、市民美術館

「約20年の歩みを見てほしい」と話す南条さんと、最初期作品「Line―軌跡―」=坂出市寿町、市民美術館


 南条さんは高松工芸高から東京造形大へ進み、土を使った絵画に取り組むようになった。現在は東京と和歌山を拠点に活動中で、フィールドワークで訪れた土地の「場所性」をテーマに、現地の土やアクリル絵の具を用いて風景画やインスタレーション作品を制作している。

 県内では2013年に高松市で個展を開催。今春の瀬戸内国際芸術祭2019春会期では坂出市沙弥島会場に出品した。今回、同芸術祭夏会期の県内連携事業として、生まれ育った坂出で初めて個展を開く。

 館内を4室に区切った展示のうち、見どころは大規模なインスタレーション。「製塩と坂出市、土地の記憶」の部屋は、塩業資料館の協力を受け、坂出でかつて栄えた製塩業を想起させる空間を演出。旧塩田の砂が静かに降り積もる様子によって時の流れを視覚的に表現する。瀬戸芸春会期の展示をアレンジした「時間と結晶」の部屋も、光や映像などで塩づくりの歴史を回想させる。

 「風景をめぐる、場所と絵画」の部屋は、都内各所の土で表現した最初期の「Line-軌跡-」(1999年)など26点を展示。「時間と結晶」の部屋には、石英の固まりにアクリル絵の具で描いた「鉱物絵画」の作品群が並ぶ。洞窟壁画に見られる動物や富士講、参勤交代、自動車、携帯電話のアンテナマークなど、数万年前から現代までの各時代を象徴する事物が絵のモチーフとなっている。

 2日に会場で記者発表があり、南条さんが作品を解説。「幼い頃からよく訪れていた美術館。素晴らしい機会を得て本当にうれしい」と話していた。

 会期は9月1日まで(8月13日休館)。入館料は一般300円。初日の6日は正午まで入館無料。午前10時から開幕セレモニーと南条さんによる展示解説がある。問い合わせは同美術館〈0877(45)7110〉。

(四国新聞・2019/08/03掲載)

南条嘉毅展-透ける表層、漂う大地-


開催期間 2019/8/6~2019/9/1
会場 坂出市民美術館(香川県坂出市寿町一丁目3番35号)
開館時間 9:00~17:00
入館料 300円ほか
休館日 2019/8/13、2019/8/19、2019/8/26
TEL 0877-45-7110

南条嘉毅展 -透ける表層,漂う大地-



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