現代人のあり方、アートで問う 直島でベネッセ賞作家展 アジアの4人紹介
世界のアーティストを顕彰する「ベネッセ賞」の受賞作家の作品展が、香川県香川郡直島町のベネッセハウスミュージアムで開かれている。これまで選出した14組の中から、近年受賞したアジアの作家4人を特集。社会や現代人のあり方に再考を促すような作品が並び、示唆に富んだ空間が広がっている。同町で受賞作家の作品展が開かれるのは2000年以来24年ぶり。
同賞はベネッセホールディングス(岡山市)が1995年から2年ごとに顕彰。アートを通じて社会に疑問を投げかけ、同社の理念「Benesse(よく生きる)」の考察につながる活動を行う作家を支援するのが狙い。当初はイタリアのベネチア・ビエンナーレで実施していたが、近年注目を集めるアジア作家に焦点を当てようと、2016年からシンガポール・ビエンナーレの参加作家を対象に行っている。
今展は同ビエンナーレを主催するシンガポール美術館との共催。16~22年に行われた第11~13回の受賞者パナパン・ヨドマニー(タイ)とズル・マハムード(シンガポール)、アマンダ・ヘン(同)、ヤン・ヘギュ(韓国/ドイツ)が出展し、直島で再構成した代表作や新作を取り上げている。
展示会場に足を踏み入れると、荒廃した寺院の素材などを集めた大型インスタレーションが目に飛び込んでくる。作家の意見を特殊な音に換えて表現した作品もあり、多文化社会で人々の声に耳を傾ける難しさを暗示するかのようだ。
このうちアマンダ・ヘンは、高齢の母親と自身が手をつないだり、抱き合ったりしたツーショット写真14枚を公開。1990年代から約10年ごとに撮影したもので、葛藤を抱えていた母親との関係が、時代の進行とともに変化していく様子を捉えたという。また、直島の女性の日常を記録した映像エッセーも併せて公開しており、掃除や散歩といった行動の繰り返しによって「時間」や「生きる感覚」を映し出している。
展示期間は来年1月5日まで。入場料は1300円。問い合わせはベネッセハウスミュージアム、電話087-892-3223。
(四国新聞・2024/06/24掲載)