田植えが一段落する「半夏生(はんげしょう)」の1日夜、香川県小豆郡土庄町肥土山地区で稲に付く害虫を炎で追い払い、五穀豊穣(ほうじょう)を祈る伝統行事「虫送り」が行われた。地域住民らが火手(ほて)と呼ばれるたいまつを青田にかざしながらあぜ道を練り歩くと、揺らめく炎の列が浮かび上がり一帯は幻想的な雰囲気に包まれた。


青々とした水田に火手の炎をかざしながら歩く親子連れら=土庄町肥土山

青々とした水田に火手の炎をかざしながら歩く親子連れら=土庄町肥土山


 午後6時、自治会役員ら関係者は小豆島霊場46番札所・多聞寺で豊作を祈願。虫塚で虫を供養した後、農村歌舞伎の舞台で知られる肥土山離宮八幡神社に火を運んだ。
 同7時ごろ、地元の家族連れら約200人が火手を握って同神社を出発。燃え盛る炎を田んぼにかざしながら、ゆっくりと歩き、約1キロ先の伝法川にかかる蓬莱橋を目指した。雨上がりで青さを増した水田や山の木々に隊列の炎が映え、情緒ある光景を写真に収める姿も見られた。
 佐伯和郎自治会長は「虫送りは家族や地域の絆を見つめ直す大切な伝統行事。農村歌舞伎とともに、後世に伝えていく」と話していた。
 同寺によると、肥土山の虫送りは江戸時代初期の1661年、イナゴの大量発生による飢饉(ききん)で大勢の人が亡くなったのを機に始まったとされる。農薬のなかった時代、害虫を火におびき寄せて駆除したことが地域に根付き、1970年に町無形民俗文化財に指定された。
 小豆島町中山地区の虫送りは6日夜に実施する予定。

(四国新聞・2024/07/02掲載)


関連情報