「石のまち」香川県高松市庵治町にふさわしい個性的な石彫作品が点在する「城岬(しろばな)公園」。目の前には穏やかな瀬戸内海が広がり、たそがれ時には、スマホを片手にした若い世代の姿も。たまにはロマンチックな雰囲気に浸ってみたい―。潮風を受けながら園内を散策した。


国内外の著名な作家が手がけた石彫作品が並ぶ園内=香川県高松市庵治町、城岬公園

国内外の著名な作家が手がけた石彫作品が並ぶ園内=香川県高松市庵治町、城岬公園


 琴電志度線・八栗駅から車で10分ほど。7月上旬の午後7時前。ちょうど夕日が屋島に沈もうとしていた。開放的な広場に設置された個性的な造形のモニュメント11基が西日に照らされ輝きを放っている。
 石彫は開園した翌年の1994年から順次常設。石彫展「石のさとフェスティバル」や「瀬戸の都・高松 石彫トリエンナーレ」に出品した国内外の著名な作家が手がけた作品などを配置している。
 九つの巨大な石が組み合わさった「遺石一億万年の海の底から」は、同年の第3回石のさとフェスティバルに出品した寺田武弘さん(大分県出身)の作品。海底に埋もれていた古代の石が地上に顔を出したという設定で、もともと一本の石を削岩機で分割して組み上げたそう。
 また、ドーナツ型の「SUN DISC」(Robert Sindorf作)は、中心に開いている穴から瀬戸内海の景色が見える。夕景をバッグにした石彫との1枚は「鉄板」ものだ。


ロッキング遊具(ロープ登り)などが取り付けられた漁船「源氏丸」

ロッキング遊具(ロープ登り)などが取り付けられた漁船「源氏丸」


 園内の一角には、展望台を兼ねた漁船「源氏丸」が設置されている。市公園緑地課によると、屋島での源平合戦で、平家が軍船を隠した入り江「船隠し」が地名として残っていることから、親しみをもってもらおうと遊具にしたという。
 日中は子どもたちが船体に取り付けられたロッキング遊具(ロープ登り)やローラー型滑り台で遊んでおり、漁業が盛んな庵治町ならではのアイデアがうかがえた。
 公園から出て右側の歩道へ進むと、「純愛ロード」が見えてくる。海沿いの石畳には全国から寄せられた恋人や家族らへの愛のメッセージを記した石版が埋められている。ハート型の石材を取り付けたベンチも置いてあり、かわいらしい見ために思わず笑みがこぼれた。
 20日には夏の恒例「ふれあい祭り庵治」が園内で開かれ、花火2千発が打ち上がるという。2004年に大ヒットした映画「世界の中心で、愛をさけぶ」のロケ地に近く、現在でも“聖地巡り”を楽しむ観光客が多い。ここは、庵治の魅力がぎゅっとつまった憩いの場だ。

(四国新聞・2024/07/13掲載)



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