交流深まる漆芸ショップ 作家と作家つなぐ場に 福場さん(高松)開設 「出会いに刺激」
香川県高松市の漆芸家福場友美子さん(30)が開設した「カモメショップ&アトリエ」がオープンから2年を迎えた。香川県漆芸研究所の修了生ら若手に発表の場を提供し、「作家同士のつながりをつくりたい」という試みで、店内では漆芸家を中心に12人の作品を紹介。ショップを介して徐々に人の輪が広がっている。
ショップは2022年12月、複合施設「TAKAMATSU JAM4・5」(同市高松町)2階にオープン。カラフルな漆の食器や一輪挿し、額作品などが並ぶほか、水引を使ったアクセサリーもある。「伝統文化を新しい形で提供する」をコンセプトに、商品情報はSNSのインスタグラムで発信。器などを修復する金継ぎも受け付けており、福場さんが併設のアトリエで作業を行っている。
大阪府出身。大学で家具作りを学んでいたが、授業で出合った漆芸に魅了され、県漆芸研究所に入所、21年に修了した。当初はアトリエを開くつもりで、将来的にショップを持ちたいと考えていた。「香川は若手の発表の場が少なく、漆芸自体の知名度も低い」。こうした思いを抱く中、さまざまなクリエーターが集うTAKAMATSU JAMに巡り合い、一念発起。母方の実家があり、自分のルーツを感じられる高松市は活動拠点として最適だった。
趣旨に賛同する作家は徐々に増え、当初の5人から今や12人に。中にはショップのインスタグラムを通じて京都のギャラリーから声がかかり、個展開催にこぎ着けた人もいる。オープンの翌年には同研究所出身の同級生3人にグループ展を開いてもらったこともあった。「作家だけでなく、お客さんとの思わぬ出会いがあった。私自身、人とのつながりを感じながら制作したいと考えていたので、求めていたものが実現した」。この2年間をこう振り返る。
店名の「カモメ」には、伝統を守りつつ独自の美を模索する作家にとって、波止場のような場所になれば、との思いを込めた。「今後は自分の制作にも力を入れ、ショップと両立させたい。ゆくゆくは漆芸以外の分野や、県外の作家ともつながり、刺激を受け合える場にしていけたら」と構想を描いている。
(四国新聞・2025/02/05掲載)