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あせぬ色彩、足跡伝え 洋画家、辻一摩さん遺作80点 古里琴平で初の個展
香川県仲多度郡琴平町出身の洋画家で、昨年3月に91歳で亡くなった辻一摩さんの遺作展が、琴平町の町立ギャラリー・ACTことひらで開かれている。20代から晩年までに手がけた世界各地や古里香川を描いた油彩画、四国こんぴら歌舞伎大芝居のポスター原画など約80点が、多岐にわたった辻さんの足跡を伝えている。20日まで(水曜休館)。無料。
辻さんは、香川大や武蔵野美術大で学んだ後、中学校の美術教師を経て、香川短大で勤務。同大名誉教授、県展審査員などを歴任した。四国新聞文化教室では40年以上、油絵講師を務めた。辻さんの個展が町内で開かれるのは初めて。
展示の中心は、辻さんが精力的に訪問していた欧州各地の風景画。「ミコノス ギリシャ」は縦約2メートルの大作で、風車の前にロバに乗ってたたずむ女性を描いている。「スペイン広場」は、陽気に歌う若者や大勢の観光客を明るくカラフルに表現している。
栗林公園や金刀比羅宮などの風景画も展示。屋島山頂からサンポート高松を描いた作品は、辻さん独特の印象的な色彩で、暮れていく空の色が表現されている。鑑賞していた善通寺市の津谷望さん(40)は「色使いがすごくきれい。ベネチアの朝の空の色なんかは、特に印象的だった」と語った。
また地元のこんぴら歌舞伎では、1985年の第1回公演から新型コロナウイルス禍の前まで、版画ポスターを毎年制作。会場の入り口近くには、荒々しい隈(くま)取りの役者らをデザインした原画が並ぶ。
会場の一角には、辻さんのアトリエを再現。愛用の椅子や筆、ペインティングナイフ、絵の具が残った状態のパレットなどを展示しており、辻さんの息遣いを感じることができる。
このほか讃岐うどんの作り方などをデザインしたポスター、スケッチ集なども出品されている。
辻さんの長女で、四国新聞連載小説「千代姫」の挿絵を担当する辻野由樹さん(61)は「油彩からイラスト、装丁まで、父はとにかく描くことが好きで、楽しんでいたというのを感じてもらえたら」と話している。
(四国新聞・2025/05/08掲載)