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心躍る島旅へ 牛島(香川県丸亀市)喧噪離れ、絶景独り占め 外国人観光客からも注目
丸亀港(香川県丸亀市福島町)から北へ約8キロの地点に浮かぶ牛島。広さ約0.7平方キロメートル、人口が10人にも満たないこの島に、旅慣れた世界中の旅行客が足を運んでいるという。魅力を探る旅に出かけた。
天気に恵まれた5月中旬、丸亀港と牛島、本島を結ぶ旅客船「にじまる」に乗船。船内からは東側に瀬戸大橋を望むことができた。海上から見る橋に心が躍り、「島旅」が始まった実感が湧いてきた。
丸亀港から約15分、牛島の里浦港に到着した。港から続く一本道を進むと、周囲は木が生い茂り、鳥のさえずりや風で葉がこすれる音が心地よかった。市街地とは異なり、車の走行音や話し声などが聞こえない空間だからこそ味わえる感覚だ。点在する小さな池にはメダカや亀、カモも。
10分ほどで、1棟貸しのゲストハウス「アイランドガール」に着いた。オーナーの横山敬子さん(74)は島の出身で、島外で暮らした後、25年ほど前にアメリカ人の夫とともにUターン。ゲストハウスは約30年前から始め、これまで約30カ国の人が利用してきたという。
ゲストハウス2棟のうち「オーシャンフロント」という名が付いたログハウス風の棟は、その名の通り目の前が海。特別に中を見させてもらうと、瀬戸大橋や行き交う船が一望でき、絶景を独り占めできた気がした。
この棟の横には、車1台が通るのも難しそうな道幅の旧「メインストリート」がある。以前は道沿いに民家があったそうだが、今は竹林に変わり、竹のトンネルのようになっていることから「京都の嵯峨野のよう」と例える観光客もいるそうだ。
横山さんによると、江戸時代、「内海の海上王」といわれた丸尾五左衛門の回船の本拠地として島は栄え、約700人が居住していたという。湧き水が豊かで、米やミカンの栽培も盛んに行われていた。だが、国による生産調整などにより就農者が減り、住民は仕事を求めて島外へ。その後も転出が相次いだそうだ。
島の中央付近にある集会場では、昭和30年代の牛島の写真が展示されている。横山さんの父親が保管していたもので、かつての活気を伝える貴重な記録でもある。島に学校があった時の様子が収められていて、運動会や祭りなどを楽しむ家族連れらが写っていた。
ほかに、興味深い言い伝えがある「無間(むげん)の鐘」などのスポットもあるが、時間の都合でこの日は断念。わずかな滞在時間だったが、日常の喧噪(けんそう)から逃れ、島ののどかな空間に魅了された。「またここに来よう」。そう心に決めて帰りの船に乗り込んだ。
島内には商店や自動販売機がないので、散策する際は飲み物などの持参を。
(四国新聞・2025/06/14掲載)