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筆に宿る魁夷の情熱 坂出・せとうち美術館 20周年展で画業たどる 所蔵日本画8点一堂に
東山魁夷せとうち美術館(香川県坂出市沙弥島)の開館20周年を記念したテーマ展「風景画家・東山魁夷の道」が17日、同館で始まった。今回は所蔵する魁夷の日本画作品全8点を一堂に公開。代表作の版画とともに紹介し、初期から晩年までの画業を伝えている。8月31日まで。
同館は、魁夷の祖父が同市の櫃石島出身であることから、東山家から作品の寄贈を受け2005年に開館。設計は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(同市浜町)などを手がけた世界的建築家・故谷口吉生さん。22年10月には入館者が100万人を突破した。
会場では制作年代順に約20点を展示。このうち1948年制作の「月宵(げっしょう)」は、疎開先の山梨県落合村(現南アルプス市)を描いた作品で、澄み切った風景から、戦争を経て再び筆を握る喜びや再出発への決意が浮かび上がっている。
「松庭(しょうてい)」(56年)は、木々の形をデフォルメし、絵の具を重ねて松やモミジの葉の形を描写。日本画家として地位を確立してもなお、新たな表現を追い求めたことがうかがえる。晩年の代表作「月光」(98年)は山形市の蔵王が取材地。これまでの作風と異なり、月明かりに照らされた雪景色を幻想的に表している。
16日には開展式があり、関係者がテープカットで節目を祝い、坂出高校音楽科の生徒が歌や演奏で花を添えた。増田昭宏館長は「先輩方の尽力があって20周年を迎えられ、感慨深い。時代に合った運営をするとともに、魅力的な展覧会を今後も開催していきたい」と話した。
(四国新聞・2025/07/18掲載)
開館20周年記念 第2期テーマ作品展「風景画家・東山魁夷の道」