風雷讃甚 やんツー

 さぬき市が生んだ江戸期の奇才・平賀源内から着想を得たインスタレーションを平賀源内記念館(同市志度)で展開する。



 これまで、セグウェイが作品鑑賞するインスタレーションなど、制作活動を通じて人間とテクノロジーの関係性を問うてきた。
 今回出品する「風雷讃甚(ふうらいさんじん)」は、同記念館全体を発電所に見立てた作品。屋上には避雷針としても機能するアンテナや太陽光パネルを設置した。
 注目してほしいのが直径1・4メートルのエレキテル。横のディスプレーには、実際に放電している様子を映し出す。生活に欠かせないインフラであるものの、目に見えず、実体がつかめない電気の存在を浮かび上がらせた。
 また、並んでいる4台のパソコン上では暗号資産(仮想通貨)のビットコインを生み出す「マイニング(採掘)」が行われている。源内が埼玉県秩父市で鉱物の採掘を行っていたのにちなんでいる。パソコンにあえて静電気を落とし、膨大な電力を消費するビットコインへのアンチテーゼを表現する。このほか、3Dプリンターを用いて「源内焼」も作成した。



 興味があることは何でも取り組む源内。この精神はアート制作と通ずるところがあり、知れば知るほど刺激がある。細部に込められた意味に思いをはせながら鑑賞してほしい。

時間との対話 ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット

 初めて津田の松原を訪れた時、頭に浮かんだのが「時間」という単語だ。いくつもの巨大な松が、数百年という歴史の中でどんなものを見て、どんな変化があったのか興味を持ちインスピレーションを受けた。



 昔と比べ、松が減っているのと同じように、日本での人口減少が著しい。人類は環境や社会とお互いに影響を受けながら、長い年月をかけさまざまな変化をしている。時の流れを感じられるこの会場で、私たちの作品を通して「時間」と向き合ってほしい。
 作品のコンセプトは人と人、場所とのつながり。今回は眼鏡レンズを人型になるように配置し、人間の魂を表現した。人間という生き物は、他の生物や物事に影響を与えやすいと考えている。自分たちが連れてきた数多くの魂と松林に宿った魂を集合させるように制作した。



 遠方からの来場者には津田の松原を新たな視点で捉えてもらいたい。もしかすると、瀬戸芸を経て元の様子に戻った後、地元の人とこの場所とのつながりも変化するかもしれない。
 一番大切にしているのは、作品は観客とのコラボレーションだということ。レンズを通すことで観客が見る景色が拡大したり、松林もどんどん増えたりしていく。そういった非日常的な体験をしてほしい。夜にはライトアップが予定されている。違った景色も楽しんでほしい。



待ってます!

平賀源内先生顕彰会事務局長 高畠功さん(52)



昔茶屋 洗心亭 安芸任男さん(80)

 津田の松原で煮込みうどんや炊き込みご飯など、昔懐かしい食事を提供しています。作家の二人はいつも笑顔で親しみやすい人柄だと感じました。キラキラした作品の中を歩けるという発想は面白く、見た人に衝撃を与えそう。地域全体でいろいろな工夫をしながら500年の歴史を持つ松を大事に守ってきました。「砂浜と松林」という日本の原風景を、たくさんの人に見てもらいたいです。



(四国新聞・2025/08/01掲載)


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