現代美術家・大竹伸朗=愛媛県宇和島市=の個展が、香川県丸亀市浜町の市猪熊弦一郎現代美術館で開かれている。約35年前から取り組んでいる「網膜」シリーズの新作など約320点を、天井が高く開放的な同館の空間を生かしながら展示。同シリーズの「今」と「これから」を予感させる空間が広がっている。11月24日まで。


「網膜」シリーズの新作などが並ぶ個展=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代

「網膜」シリーズの新作などが並ぶ個展=香川県丸亀市浜町、市猪熊弦一郎現代美術館


 大竹は絵画、版画、映像、インスタレーションなど幅広く手がけ、1988年に拠点を宇和島市に移した。「ドクメンタ」(ドイツ)と「ベネチア・ビエンナーレ」(イタリア)の二大国際展に参加するなど、海外でも高く評価されている。県内では直島、女木島、豊島で作品を展開している。
 同シリーズは宇和島に移って間もなくに着想。廃棄されたポロライドフィルムを引き伸ばし、表面に透明のウレタン樹脂を塗り重ねて制作している。光を感受し視神経を介して脳に情報として伝える網膜の機能と重ね、シリーズ名にした。
 本展のために制作した大型の新作12点はいずれも約30年前のフィルムを使用。フィルムの化学成分の変化によりさまざまな色が生まれ、時の流れを画面に閉じ込めている。最新作「網膜/六郷」は、配電盤などを配し、大竹が幼少期を過ごした町工場が密集する東京都大田区南六郷での記憶を表現している。
 また、高さ約7メートルのインスタレーション「網膜屋/記憶濾過(ろか)小屋」は、当初のイメージ通りに作り上げるため手を加え、11年ぶりに公開。故人らの物に触れることでその人の網膜に写った映像を再現できる「おやじ」が営んでいるという大竹の構想を作品に落とし込んだ。「依頼者」が持ち込んだであろう写真やレコードなどがひしめき、「おやじ」の気配を感じさせる。
 このほか、同シリーズに関連した写真などもあり、軌跡を一望できる。問い合わせは丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、電話0877-24-7755。

(四国新聞・2025/08/29掲載)


丸亀市猪熊弦一郎現代美術館



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