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魁夷の見た町、窓から思いをはせて 坂出・せとうち美術館 きょうから特別展
東山魁夷せとうち美術館開館20周年記念秋の特別展「東山魁夷の『窓』」(四国新聞社共催)の開幕を前に5日、香川県坂出市沙弥島の同美術館で開展式と内覧会が行われた。来場者は魁夷が見た町の風景や人々の暮らしに思いをはせながら、優美な世界観に浸った。会期は6日から11月3日まで。
今展では、同美術館や長野県立美術館東山魁夷館などが所蔵している絵画28点などを紹介する。内覧会には関係者が参加し、大山智副知事らによるあいさつの後テープカットを行った。
展示作品の中で最も大きく、今展のチラシに用いられた「窓」は1969年にドイツ・ローテンブルクの街角をスケッチし、岩絵の具で仕上げた。白枠の窓を中央にあしらったシンプルな作品だが、石畳や古びた壁に刻まれた「1537」という年記から時の流れを感じることができる。また、少し開いたカーテンは、その奥で繰り返されてきた人々の日々の暮らしを伝えている。
1969年に描いた「森の幻想」は、密集する木々のトンネルの奥にドレスを着てダンスをする人影がぼんやりと描写されている。そこにはシャンデリアも描かれており、魁夷の空想が入り交じった不思議な風景が広がっている。ほかには色の重なりを意識したリトグラフや、再訪した町と自分自身の変化を重ねた作品などが展示されている。
同美術館の増田昭宏館長は「今回は窓という、これまでにない切り口とストーリー。魁夷の作品を見たことがない人でも分かりやすいテーマなので、幅広い世代の人に足を運んでほしい」と来場を呼びかけた。
(四国新聞・2025/09/06掲載)