コーヒーなどを飲みながら、レコードから流れるジャズにじっくり聴き入る日本独自の「ジャズ喫茶」が外国人から注目を集めている。海外に同様の店が少ないことや、近年のレコードブームが影響しているとみられ、香川県高松市の店でもアジアを中心に訪日客が増加。喫茶オーナーらは「日本の音楽鑑賞文化がさらに広がれば」と期待している。


ジャズに耳を傾けながら店主と談笑する台湾人の女性客(左)=香川県高松市古馬場町

ジャズに耳を傾けながら店主と談笑する台湾人の女性客(左)=香川県高松市古馬場町


 ジャズ喫茶は、生演奏を主体とするジャズバーとは異なり、音質にこだわった再生機器から流れる音楽にじっくりと向き合うスタイル。日本が発祥とされており、1960~70年代に若者の間で流行した。渡辺貞夫さんら大物ミュージシャンも喫茶に通ってジャズを体得していったといい、「本場」のジャズ喫茶の雰囲気を味わおうと、日本の店を訪れる外国人が増えているという。
 高松市古馬場町の「フィフティ」では2023年のオープン以来39カ国の外国人が来店し、瀬戸内国際芸術祭春会期が開かれていた今年4、5月は訪日客が半数を占めた。オーナーの藤橋達也さんは「外国人にとって日本のジャズ喫茶は聖地のような存在。買い物のついでに来店するのではなく、音質にこだわったレコードを聴こうという目的意識を持った人が大半」と説明する。
 店内でジャズに耳を傾けていた台湾の画家・張祐齢(チョウユニ)さん(28)はインターネットで店を調べて来店したという。「曲の種類が多く、オーナーが客の好みを見抜いてくれる。台湾ではお酒と一緒に音楽を楽しむが、日本の店は聴くことを重視するのがいい」と語る。
 「若い頃はジャズ喫茶に入り浸っていた」と話すのは、コーヒーと本と音楽をテーマにした「半空」(同市)の岡田陽介店主。「昔の喫茶は二重扉を設けるなど音へのこだわりが強かった。私の店作りも当時の影響を受けており、外国人はそんな雰囲気に引かれるのだろう」と想像する。
 県内で音楽イベントを企画する「街角に音楽を@香川」の鹿庭弘百代表理事は「デジタルが普及する中で多くの人がレコードの音を求めているのはうれしい。アナログの良さを見つめ直し、音楽と向き合うきっかけになれば」と話している。

(四国新聞・2025/09/29掲載)



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