善通寺市名誉市民で漆芸作家の故・大西忠夫さん(1918~2007年)の作品展が、香川県善通寺市文京町の善通寺市美術館で開かれている。馬や鳥などの生き物を題材に、自然界の一瞬を切り取った優美な彫漆作品が来場者を魅了している。無料。19日まで。


生き物を題材にした大西さんの作品に見入る来場者=香川県善通寺市文京町、市美術館

生き物を題材にした大西さんの作品に見入る来場者=香川県善通寺市文京町、市美術館


 大西さんは筆岡村(現・同市中村町)生まれ。色漆を何層も塗り重ねた上で彫る技法「彫漆」を基本に、のみややすりを使って表現する独自の作品を生み出してきた。1955年には日展特選となったほか、日展審査員を3回務めた。
 作品展は市が毎年開催しており26回目。今回は「生生(せいせい)」をテーマに39点を展示した。
 二曲屏風(びょうぶ)「海明け」は、流氷が漂う海辺で、春の訪れを喜ぶかのように跳ねるキツネを描いている。額面「朝陽(ちょうよう)」では、シカたちの躍動感とともに、柔らかな毛の質感までも表現している。
 また夜の森にたたずむ愛らしいフクロウや、荒々しい馬、小さなテントウムシなど、大西さんが生き物に向けた温かな視線を感じさせる作品が並ぶ。
 市内から訪れた80代の女性は「大西さんの作品は初めて見たが、すごく面白くて刺激になった」と満足そうに話した。

(四国新聞・2025/10/15掲載)


善通寺市美術館



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