香川県高松市亀水町の瀬戸内海歴史民俗資料館で企画展「新民芸の創出―デザインで生活を豊かにする―」が開かれている。昭和30~40年代、琴平町出身の画家和田邦坊らが中心となって取り組んだデザイン運動などによって成長を遂げた「新民芸」の歩みを伝えている。11月9日まで。


新民芸の歩みを伝える工芸品などが並ぶ企画展=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館

新民芸の歩みを伝える工芸品などが並ぶ企画展=香川県高松市亀水町、瀬戸内海歴史民俗資料館


 同資料館によると、戦後、生活基盤を失った人々の暮らしを支えるため、県内でも外貨獲得のため日用品などの輸出振興が図られたり、生活用品の展覧会が開かれたりしていた。そんな中、よりデザインを追究した製品が求められるようになり、香川の伝統的な漆器や張り子などにデザイン性を取り入れた「新民芸」が生まれていったという。
 1954年、当時の金子正則知事に招かれた邦坊は栗林公園商工奨励館の職員となり、讃岐民芸館の開館準備や県内企業のデザイン指導などに奔走。地元で制作された家具や漆器などに新たな息吹を吹き込み、「新民芸」を産業工芸として育てた。
 本展は、同資料館が国の重要文化財に指定されたのを記念した事業の一環。屋島山上交流拠点施設「やしまーる」と連携して企画し、民芸品など約200点を展示している。
 会場には、邦坊がデザインした盆などが並んでいる。日本貿易振興会(ジェトロ)が海外から収集したデザイン性が優れた生活用品も展示。色彩豊かなカップや調理器具などがあり、洗練された雰囲気を醸し出している。
 同展担当の田井静明専門職員は「工芸品にデザインを取り込むという姿勢は現在も受け継がれている。地場産業の育成の足跡を見てもらえれば」としている。
 入場無料。問い合わせは瀬戸内海歴史民俗資料館、電話087-881-4707。

(四国新聞・2025/10/16掲載)



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