瀬戸内国際芸術祭2019の秋会期が開幕した28日、新たに会場に加わった伊吹島(観音寺市)など中西讃の4島には、待ちわびた美術ファンや家族連れが次々に訪れ、終日にぎわった。本島(丸亀市)では参加アーティストと島民が共同制作した作品が披露されたほか、高見島(多度津町)では廃屋や石など地域にあるものを生かした作品に注目が集まった。粟島(三豊市)ではベトナム出身の参加アーティストが考案した新感覚のうどんを島民が販売。食を通じて来場者と島民が交流を深める姿も見られた。「ひろがる秋」をテーマに掲げた瀬戸芸2019の終章が始まった。会期は11月4日までの38日間。


産前産後の女性たちが集団生活した出部屋から着想を得た栗林隆さんの「伊吹の樹」=観音寺市、伊吹島


5色の漁網、海風に揺れ 本島

 塩飽水軍ゆかりの歴史が息づく本島では、古民家を舞台にした作品や瀬戸内の風景と調和した作品などを目当てに多くの人が訪れ、島の魅力に浸った。

 本島港近くの海岸には、漁網アート「そらあみ〈島巡り〉」を展示。秋会期に向けて丸亀、三豊市と多度津町の島々の住民が編んだものが、春会期公開の作品につなぎ合わされ、長さ約120メートルに。5色の漁網が海風に揺れ、来場者は盛んに写真に収めていた。

 前回人気を博した、島の女性たちがタコ飯やタコ天などを提供する「島娘」が復活。また、今回は島内の各飲食店でタイとのコラボレーション企画もあり、来場者はタイ風のドリンクでのどを潤していた。


「そらあみ」を鑑賞する来場者=丸亀市、本島


空き家が神秘的空間に 高見島

 空き家を使ったインスタレーションなどが並ぶ多度津町の高見島では、お目当ての作品を探して細い路地を行き交うアートファンらでにぎわった。

 廃屋で感じたイメージを色鮮やかに描いた藤野裕美子さんの「過日の同居」。夫婦で訪れた兵庫県の主婦有田一美さん(60)は「ここで実際に使われていた道具が新しい技法で描かれていて、想像力をかきたてられる」と絶賛していた。


藤野裕美子さんの「過日の同居」を鑑賞する来場者=多度津町、高見島


粟島

 瀬戸芸ならではの「食」も人気を集めた。粟島では空き家を利用し、ベトナム出身の作家ディン・Q・レさんが考案したベトナムの麺料理フォーと讃岐うどんを掛け合わせた「フォうどん」を販売。限定60食は昼過ぎに完売。料理を担当した地元の藤田定子さん(80)は「初日からうれしい悲鳴。ここでしか味わえない一品を十分に堪能してほしい」と話していた。

(四国新聞・2019/09/29掲載)


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