参道に巨大なクジラがお目見え―。海の神様として知られる琴平町の金刀比羅宮表参道沿いに、シャッターアート「希望のくじら」が完成した。県内随一の観光地に突如として現れたクジラがモチーフのアート作品に、大勢の観光客や訪日外国人(インバウンド)も思わず足を止め、記念撮影をするなど早くも人気スポットとなっている。関係者らは「歴史的な参道にこれまでなかったような新たなシンボルができた」と活性化に向け手応えを感じている。


「希望のくじら」の完成に向けて微調整を重ねる幸山さん=琴平町

「希望のくじら」の完成に向けて微調整を重ねる幸山さん=琴平町


 町内の各種団体で組織する「こんぴら観光ブランド戦略会議」が、年々増え続ける空き店舗対策として初めて企画した「表参道シャッターペイント事業」の一環。中心となってシャッターアートを手掛けたのは、岡山県在住の画家、幸山将大さん(31)で、制作には地元の子どもたちのほか、地域住民や観光客も加わった。

 キャンバスになったのは、石段の83段目にある約10年前に閉店した一刀彫の店の縦約3メートル、横約8メートルのシャッター。幸山さんは、琴平だからこそ描ける絵として、大いなる海の生物で幸運の象徴ともされるクジラを描くことに決め、具体的なデザインを考案。9月22日に下地を描く作業からスタートした。

 翌23日には、地元の小学校に通う児童や地域住民らが作業に参加。幸山さんがあらかじめ描いたクジラの輪郭に、水性ペンキを使用してそれぞれの感性で色を付けていった。シャッターの凹凸に苦労しながらも鮮やかに彩色し、中には自分の手を筆代わりにする参加者もいた。完成までの延べ10日間で約70人が制作に携わったという。

 幸山さんは、参拝客がこれは何だろうと立ち止まる絵が描けたとした上で、「制作に参加してくれた人にも完成した様子をぜひ見に来てほしい。『ここは私が色を塗った』などと話してもらい、この作品を通じて人と人がつながればうれしい」と話していた。

 企画立案したこんぴら観光ブランド戦略会議は「今後も訪れる人たちの興味を引くような事業を展開していきたい」としている。

(四国新聞・2019/10/13掲載)



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