本島から見る瀬戸大橋 丸亀市 別角度から見つける新しい表情 白鳥のような優美さ 20世紀遺産20選にも
瀬戸内国際芸術祭2019の会期も残りわずか。秋会期の会場である丸亀市の本島では、島内のさまざまな場所から瀬戸大橋を見晴らすことができる。瀬戸大橋はつり橋と斜張橋、トラス橋と3種類六つの橋からなる。島内をぐるりと巡りながら、たくさんの顔を持つ橋を眺めてみよう。
フェリーが発着する泊港から、ロシア出身のアレクサンドル・ポノマリョフさんの作品「水の下の空」のある海岸まで、まずはバスで移動した。
作品の向こう側には砂浜が広がり、岩黒島と羽佐島、櫃石島(いずれも坂出市)を結ぶ岩黒島橋と櫃石島橋が見える。二つの橋は斜張橋で、白鳥が羽根を広げたような優美な姿が瀬戸内海とマッチしている。よく目を凝らすと、岩黒島に上陸するために作られたループ状の道路も見える。
そこから徒歩で新在家海岸へ。ここからは岩黒島橋、櫃石島橋が見渡せるほか、下津井瀬戸大橋が眺められる。岡山県倉敷市の遊園地「鷲羽山ハイランド」の観覧車も見え、本州との近さがよく分かる。海岸沿いの道はゆるやかなカーブを描いており、秋晴れの日はとても気持ちがいい。
また、この海岸には丸亀市の建築家斉藤正さんと塩飽大工の技術を現代に復活させようと集まった「続・塩飽大工衆」が古来の工法で建築した建物があり、ここから眺める海も来場者に人気だ。近くには死者を土葬する墓と参拝用の墓を分ける「両墓制」の墓も残り、本島らしい場所といえるだろう。
最後は泊港に近い、五十嵐靖晃さんの「そらあみ」が設置されている海岸から南・北備讃瀬戸大橋を一望する。両橋が共有するアンカレイジ(橋台)でそれぞれのケーブルワイヤをつなぎとめる形式は世界で初めて採用され、つり橋技術のシンボルとして「日本の20世紀遺産20選」にも選ばれている。
瀬戸大橋が完成したことが本島や岩黒島、櫃石島など塩飽諸島の人々の生活を変えたことは言うまでもないだろう。私たちの生活の中に当たり前に存在している瀬戸大橋を改めて見つめ直す機会になった。
(四国新聞・2019/10/29掲載)