丸亀のシンボルである太助灯籠(丸亀市西平山町)から歩いて数分。路地の中に「京極庵」と名付けられた屋敷がたたずむ。江戸時代から続く京極家付きの商家だった前谷家が1886(明治19)年に建てたもので、街の騒がしさから離れ、茶の湯の文化や丸亀の歴史に触れることができる。


ススキやシダなどが美しい庭。奥には丸い窓が印象的な茶室がある


 屋敷は取り壊しの危機にあったところを、同市内で不動産会社を営む鈴木武子さん(78)が購入。茶の湯など日本の文化を広めたいと一般に公開している。

 屋敷の中には「山里の庭」と呼ばれる中庭があり、シダが12種類ほど植えられているそう。モミジはもう終わってしまったが、ススキが風にそよいでいた。さぬき浜街道まではわずかな距離しかないにもかかわらず、鳥のさえずりだけが聞こえる静かな空間だ。

 奥には茶室があり、抹茶と和菓子をいただくことができる。和菓子は近くの老舗菓子店「宝月堂」から取り寄せており、今の季節はツバキやサザンカなど冬の花々をモチーフにした菓子が味わえる。

 お茶と聞くとついつい肩肘を張ってしまいそうだが「普段着で気軽に来て、ゆっくりしていって」と鈴木さん。茶道裏千家淡交会丸亀分会による教室も開かれているという。

 別棟の茶室「松濤(しょうとう)庵」は、千利休好みの小庵。文化人も足しげく通ったそうだ。


利休好みの小庵「松濤庵」=いずれも丸亀市西平山町、京極庵


 美術品も数多く展示している。中でも丸亀市出身の日本画家山下紅畝(こうほ)(1884~1977年)の作品は見もの。彼女は東京女子高等師範学校(現お茶の水女子大)卒の才女で、夫を亡くし子どもを育て上げた後、画業にいそしんだ。花鳥画が多く、そのタッチは実に繊細で優しい。京極家ゆかりの将棋盤や東山魁夷の作品も展示されている。


丸亀市出身の日本画家山下紅畝の作品などが展示されている


 開館時間は9:30~16:00まで。入場料は内覧のみが500円、抹茶とお菓子付きで1000円。日、月曜日と祝日は休み。問い合わせは 電話0877-24-5288。

(四国新聞・2019/12/03掲載)

京極庵


所在地 香川県丸亀市西平山町194
開館時間 9:30~16:00
定休日 日、月曜日 祝日
入場料 内覧のみ500円、抹茶とお菓子付き1000円
TEL 0877-24-5288


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