多度津町の彫刻家、速水史朗さん(92)が全国各地で手掛けたパブリックアート作品のマケット(模型)と設置現場の写真パネルを展示する特別展が、多度津町家中の町立資料館と多度津町東白方のうみかギャラリーの2カ所で開かれている。公開を前提にしていないマケットの展示は珍しく、速水さんの制作プロセスを垣間見ることができる。


「環境と芸術の関係を見つめる機会になれば」と語る速水さん=多度津町家中、町立資料館


 パブリックアートは美術館やギャラリーではなく、公園や行政施設などの公共空間に設置した芸術作品。県文化功労者の速水さんはパブリックアートの制作で知られ、これまでに北海道から九州まで300点超の彫刻作品を手掛けてきた。海外でも米ワシントンDCに置かれている。

 速水さんは制作時、石彫の職人らに作品のイメージを伝える目的でマケットを作った。今回の特別展は、同資料館の呼び掛けに速水さんが応じて実現。マケットのまとまった数の公開は自身初めてという。

 同資料館には1990年代を中心にマケット18点、写真パネル16点を展示。速水さんの主な作品のマップも紹介している。同ギャラリーでは県内を中心にした写真パネル31点、マケット3点を見られる。

 東京都庁の第一本庁舎の近くに置かれた「宇宙からのメッセージ」は91年の作品。速水さんらしい丸みを帯びた柔らかな形の黒御影石の彫刻は、讃岐の“おむすび山”をイメージしたものという。速水さんは「讃岐の山を東京の中心に置いたら面白いだろうと思いついた。作品名の宇宙は讃岐のことでもある」と明かす。作品を讃岐の山々と捉えた上で写真パネルを見ると、超高層の都庁舎との対比がより一層興味深く感じられる。

 「子どもたちが野外作品と触れ合い、遊んでいる姿を見るのはうれしいこと」と語る速水さん。しかし、パブリックアートの設置は減少してきているという。「まちの中にアートが一つあることで、空間もそこを行き交う人の心も豊かになる。今回の展示が環境と芸術の関係について、来場者に見つめ直してもらう機会にもなれば」と話している。

 速水さんのギャラリートークが12日14:00から町立資料館、25日14:00からうみかギャラリーで、それぞれ開かれる。無料。

 会期は、町立資料館が2月9日まで。休館は月曜(祝日の場合は翌日)。うみかギャラリーは2月8日まで。休館は日曜・月曜と1月18日。観覧無料。問い合わせは町立資料館、電話0877-33-3343、うみかギャラリー、電話0877-89-2864。

(四国新聞・2020/01/11掲載)




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