東山魁夷美術館 テーマ作品展で技術着目 原画、忠実に木版画に
香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、木版画と雑誌の表紙絵をテーマにした作品展が開かれている。魁夷の原画を忠実に再現する木版画では、彫りと摺(す)り、そして写し取る和紙に込められた熟練の技術や熱意にスポットを当てた。雑誌の表紙絵では、風景画とは違うユーモアあふれる作風が味わえる。9月13日まで(7日は休館)。
木版画「月唱」は60の版を使って制作され、版を重ねるごとに山の木々や夜空に浮かぶ月、水面(みなも)に映る風景の色彩が深みを増していくのが分かる。これに使われた26枚の版木全てを展示している。木は非常に貴重だったことから裏表の両面を使うなど有効活用されていたという。
版の数120にも上る「谿若葉(たにわかば)」は、試し刷りを確認した魁夷が細かな色合い調整を摺師(すりし)に依頼する文章を示し、妥協なく完成度を高めていく姿勢を紹介。数百回に及ぶ摺り回数に耐え、木版画に欠かせない手すき和紙にも注目し、拡大写真で細く長い繊維が絡みあう和紙のしなやかな強さを伝えている。
一方、表紙絵は「新潮」の1954年と55年の2年間、24号分を担当。前半は「季の詩」と題し、果樹園の花盛りや色鮮やかなヒマワリ、紅葉など四季折々の風景を描いた。後半では外国の格言などから構想を練った作品シリーズで、大学卒業後に留学した魁夷らしく、海外の言葉にも高い関心を寄せた一面がうかがえる。
(四国新聞・2020/08/30掲載)
東山魁夷せとうち美術館
所在地 | 香川県坂出市沙弥島字南通224-13 |
---|---|
開館時間 | 9:00~17:00(入場は16:30まで) |
休館日 | 月曜日(休日の場合は開館、翌日火曜日が休館) |
TEL | 0877-44-1333 |