香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館は、秋の特別展「いにしえの美にまなぶ」を開催している。日本画家で武蔵野美術大名誉教授の井上耐子さん=高松市出身=による古典絵画の模写を中心に展示。制作者の思いを酌み取った作品の数々が並び、来館者は時代を超えて表現された美の奥深さを感じている。8日まで。


井上さんによる「伝真言院曼荼羅図」の再現模写に見入る来館者=坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館


 美術館によると、井上さんは東京芸術大在学中の1967年、49年に火災で焼損した法隆寺金堂壁画の再現模写事業に助手として、最年少で参加した経験を持つ。

 特別展は筆線や色彩の修練、伝統技術の継承、作品の保存を目的とした模写を通じて、描く魅力を考えてもらおうと企画。井上さんの作品は模写19点とオリジナル1点を展示している。

 国宝の伝真言院曼荼羅図の再現模写は、縦約1・8メートル、横約1・6メートルの大作で、大日如来を中心に400以上の仏を描いた。絵絹の裏から色付けする「裏彩色(うらざいしき)」により、独特の色合いを生んでいる。

 また、貴族の乗る牛車を引く牛の「駿牛図」の模写は、丁寧な筆致や墨の濃淡で立体感などを出し、気品漂う愛らしい様子を表現。このほか、一定の太さで迷いなく引かれた「鉄線描」の美しさが味わえる「浄瑠璃寺吉祥天厨子絵」や、雪深い山里へ向かう道中の景色の移り変わりを描いた「小野雪見御幸絵巻」なども目を引く。

 会場では、東山魁夷が77年に中国北西部を訪れた際の作品も展示。自然の生命力や彩り、潤いが感じられる普段の作風とは対照的な灼熱(しゃくねつ)や荒廃、乾燥といった言葉をイメージする光景が描かれている。

(四国新聞・2020/11/03掲載)

秋の特別展「いにしえの美にまなぶ」


所在地 香川県立東山魁夷せとうち美術館
香川県坂出市沙弥島224−13
会期 9月19日(土)~11月8日(日)
開館時間 9:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日 月曜日(休日の場合は開館、翌日火曜日が休館)
TEL 0877-44-1333


香川県立東山魁夷せとうち美術館


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