電子書籍やインターネット通販の広がりで中小の書店が苦境にあえぐ中、来店者に店オリジナルのはんこに各店独自のメッセージを添えた「御書印」を押す取り組みが全国に広がり始めている。県内では唯一、小豆島町田浦の二十四の瞳映画村内にあるブックカフェ「書肆海風堂(しょしうみかぜどう)」が参加。同店は「観光で小豆島を訪れたついでに、思い出として御書印をゲットして」と多くの利用を呼び掛けている。


二十四の瞳映画村内のブックカフェ「書肆海風堂」が御書印帖に押している御書印。店のロゴをあしらったオリジナル印などのほか、小説「二十四の瞳」の一節も添えている


 寺社でもらえる御朱印の書店版で、来店者が持参した「御書印帖」にはんこを押す取り組み。今年3月、店員に相談したくても話し掛けにくい書店の雰囲気に危機感を抱いた小学館パブリッシング・サービス(東京)の社員の発案で生まれた。

 書肆海風堂は10月5日から取り組みに参加。全国では42都道府県210店に拡大しており、御書印収集は本好きの間でじわじわと人気を広げている。

 書肆海風堂では、店のロゴをあしらったはんこと共に、小豆島町出身の作家壺井栄(1899~1967年)の代表小説「二十四の瞳」の一節「このひとみを、どうしてにごしてよいものか。」を添えている。

 「二十四の瞳映画村らしく、小説『二十四の瞳』からおなご先生(大石先生)の子どもたちへの覚悟、責任が感じられるフレーズを採用した」と書肆海風堂の浜本千絵美店長(41)。「観光施設の中の店なので書店としてのニーズは少ないが、御書印帖を持ったお客さんが増えてくれれば。そして来店をきっかけに二十四の瞳を読んでもらえればうれしい」と言葉をつなげた。


ブックカフェ「書肆海風堂」の店内=小豆島町田浦、二十四の瞳映画村内


 書肆海風堂を10月に訪れ、御書印を押してもらった岡山県倉敷市の原田直人さん(38)は「書店ごとにはんこには特色があるので、集めがいがある。後で御書印帖を見返すと、旅を思い出すので楽しい」とプロジェクトの魅力を語る。寺社の御朱印や鉄道版の「鉄印」、郵便局印なども収集しており、暇を見つけては全国各地に出向いているという。

 書肆海風堂の営業時間は9:00~17:00で無休。御書印代は200円(税込み)。現在、御書印帖を無料で配布するほか、特別仕様の「特装版」も2200円(御書印代込み)で販売している。問い合わせは映画村、電話0879-82-2455。

(四国新聞・2020/11/05掲載)

書肆海風堂


所在地 香川県小豆郡小豆島町田浦甲931
営業時間 9:00~17:00
定休日 無休
TEL 0879-82-2455


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