ブルートレイン、間もなく香川へ―。香川県善通寺市の夫婦が鹿児島県で野ざらしになっている寝台特急「ブルートレイン」を遍路宿としてよみがえらせようと進めているプロジェクトで、車両2両が近く観音寺市に移設される。夫婦はクラウドファンディング(CF)で集まった浄財などを基に修繕を行い、今年中の宿のオープンを目指している。


「いろんな人の協力でここまでたどり着いた」と話す岸井さん=鹿児島県阿久根市

「いろんな人の協力でここまでたどり着いた」と話す岸井さん=鹿児島県阿久根市


 取り組んでいるのは、岸井うどん(善通寺市生野町)店主の岸井正樹さん(60)夫婦。

 小学生の頃から鉄道ファンの岸井さんは、数年前に鹿児島県阿久根市で2両のブルートレインが放置されていることを知った。2両はかつて大阪や京都と九州を結んだ寝台特急「なは」で、うち1両は希少価値の高い全室2人用個室の「デュエット」。貴重な車両を存続させようと、移設に向けて取り組んできた。

 費用は2019、20年に実施したCFで確保。全国の鉄道ファンらから約1700万円の寄付が集まり、返礼品のグッズ製作費などを引いた約1200万円が残った。

 移設先は雲辺寺ロープウェイ山麓駅(観音寺市大野原町)の駐車場。お遍路さんが訪れやすい立地であることや車両を置くのに十分な広さがあることから、管理する四国ケーブル(高松市)に設置の許可をお願いしたところ、快諾を得た。

 車両は現在、鹿児島県にあり、トレーラー2台でけん引する。大分県から愛媛県まではフェリーに乗せるなど4日がかりの行程で、距離は600キロを超えるという。

 設置後は車両の塗り直しや修繕などを行う。将来的には、老朽化を防ぐために車両を大きなビニールハウス内に格納するほか、キッチンやシャワー設備を整えたり、宿泊者がライチなど果物の摘み取り体験ができるようにしたりする予定。自身のうどん店も併設したい考えだ。

 岸井さんは「いろんな人のおかげでここまで来ることができた。ご縁に感謝している。宿のオープンを実現するため、引き続き頑張りたい」と話している。

(四国新聞・2021/04/12掲載)


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