盆栽の町・高松市鬼無町に立つ私設美術館「鬼無庭園美術館」。画家で写真家の住田佳瑞子さん(50)の作品が並べられ、周囲ののどかな田園風景や静かな雰囲気と相まって、日常を忘れてほっと一息つける空間になっている。古民家と日本庭園もあり、新旧の美が一度に味わえる。


スライド式の収納庫を中央に配置。正面に飾られている絵画がより印象的になる

スライド式の収納庫を中央に配置。正面に飾られている絵画がより印象的になる


 住田さんは24歳で勤めていた会社を辞め、米国ニューヨークのアートスクールでイラストレーションを学んだ。結婚、出産を経て2001年に帰国。自閉症の息子のためにグループホームや作業所などを開くことも考えたが、自身の作品を展示し、アートを通じてさまざまな人が交流できる場をつくろうと自宅敷地内に私設美術館を開館した。

 3階建ての美術館の1階が展示スペース。住田さんの油絵や写真などが展示されている。中央にあるのは、美術館にあるようなスライド式の収納庫。たくさんの絵が掛けられ、自由に引き出して絵を見ることができる。


館内には天窓があり、自然光が降り注ぐ

館内には天窓があり、自然光が降り注ぐ


 住田さんの油彩画は、優しい色合いが目を引く抽象画。自閉症の息子を抱え、これまでの十数年を「怒濤(どとう)の日々だった」と振り返るが、そんな中でも絵を描くときには自分に正直になり、心のバランスを保つことができたのだという。絵を眺めていると、住田さんが困難にぶつかりながらも朗らかに歩んできたことが伝わってくる。

 美術館を出ると、住田さんの父が住む家が見える。1905年に建てられたという古民家の庭には、立派な黒松やカキ、スモモなどが植えられ、大きな藤棚も見事だ。


屋上からの眺め。庭には四季折々の花が咲く=高松市鬼無町、鬼無庭園美術館

屋上からの眺め。庭には四季折々の花が咲く=高松市鬼無町、鬼無庭園美術館


 6月2日には、県立ミュージアム学芸員の田口慶太さんを招き、「日本庭園の起源とイサム・ノグチ」をテーマにトークイベントを開く。この場所で交流が生まれることに夢を抱く住田さん。根底には芸術家たちが集まり、住まいをシェアしたり、互いに励まし合いながら制作したりするニューヨークの暮らしがあるのだとか。

 入館料は500円。不定休のため、事前予約をして来館するのがおすすめ。問い合わせは住田さん〈090-2782-2063〉。

(四国新聞・2019/05/14掲載)

鬼無庭園美術館


所在地 香川県高松市鬼無町藤井180-9
定休日 不定休
TEL 090-2782-2063


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