香川の伝統工芸の一つ「讃岐のり染」の作品を手掛ける香川県高松市築地町の染色作家大川原誠人(58)の個展「めぐる、還る」が坂出市駒止町のかまどホールで開かれている。大川原が10年以上取り組む「○と×」をテーマにした大作などが並び、伝統技法を用いたメッセージ性あふれる作品の世界に浸れる。30日まで。


作品について解説する大川原誠人=坂出市駒止町、かまどホール


 大川原は江戸時代から続く染物店の7代目。2009年に県伝統工芸士に認定され、国内外で作品を発表しているほか、瀬戸内国際芸術祭にも参加した。讃岐のり染は、もち米で作ったのりを防染材として用い、防染材を施した部分だけ白地を残す技法。県内初の個展となる今展では、新作を含む約10点を紹介している。

 このうち「selection」は縦6メートル、横0・9メートルの布4枚を組み合わせて巨大な○と×を表現した大作。布と布の間隔をあえて空けることで、人生の節目などに生じる選択の迷いも表現している。64個のクッションの表裏に○と×を染め、升目状に並べた「KYOKUMEN」は、ボードゲームのオセロとしても遊べるユニークな作品。○と×のせめぎ合いを心の葛藤のようにも見ることができる。

 大川原は「物事は気持ち次第で良くも悪くも捉えられる。作品を通じて選択に迷っている人の背中を押せたら」と話している。

 入場料は一般300円ほか。問い合わせはかまどホール、電話0877-46-2178。

(四国新聞・2021/05/13掲載)



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