鹿児島県に置かれていた寝台特急「ブルートレイン」の車両2両を遍路宿として生まれ変わらせるプロジェクトで、車両が観音寺市大野原町の雲辺寺山麓に移設されて18日で1カ月。遍路宿としての開業はまだ先だが、鉄道ファンにとどまらず県内外から多くの見物客が訪れ、ちょっとした観光スポットになっている。駅のイメージを出すために2両の間にウッドデッキのホームを整備するプランも浮上している。


雲辺寺山麓に移設された2両のブルートレイン。右は希少価値の高い全室2人用個室の「デュエット」車両=観音寺市大野原町


 ブルトレ2両が置かれているのは雲辺寺ロープウェイ山麓駅の第2駐車場。ロープウエーを運行する四国ケーブル(高松市)によると、土日祝日には1日50~100人程度が来訪しており、写真共有アプリ「インスタグラム」にもブルトレを被写体にした投稿が増えている。

 2両は、善通寺市のうどん店経営、岸井正樹さん(60)が鹿児島県阿久根市で野ざらしになっていたのを遍路宿としてよみがえらせようと、クラウドファンディングで約1700万円を調達して移送した。「四国遍路の駅 オハネフの宿」の名称で年内の開業を目指し、現在は剝がれた車両の塗装の塗り直しに取り掛かっており、電気や水道などの整備も進めていく。

 16日に高知県いの町から訪れた鉄道ファンの小松誠さん(43)は「ブルトレが阿久根にあるのは知っていて気になっていた」と言い、近くの香川にやって来たことを喜んだ。「ブルトレは青い車体と横のラインが特徴的で、いかにも昭和の列車という感じがする」と貴重な鉄道遺産である点を強調し、「宿泊施設として使われるようになれば、1回泊まってみたい」と開業を心待ちにした。

 鹿児島から3泊4日、約700キロに及んだ大掛かりな移送作戦も語り草になっている。「『撮り鉄』ではないけど写真が好きで」とさまざまな角度からカメラを向けていた丸亀市の女性は「ここまでの山道をよく運んでこられたものだと感心する。岸井さん夫妻が喜んでいる様子をテレビで見て、願いがかなって良かったなと思った」と話した。

 岸井さんは開業に向けて「せっかくなので駅の雰囲気を出せれば。車両のドアとフラットになるようウッドデッキのホームを整備し、ベンチも設けたい」と新たなアイデアを語り、準備に奔走している。

(四国新聞・2021/05/18掲載)


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