香川県小豆島町馬木の旧醤油(しょうゆ)会館を改装して現代美術館にする事業が進行している。同地区で芸術活動を展開する小豆島アートプロジェクト(石井純代表)の取り組みの第2弾。県出身の洋画家猪熊弦一郎や環境アーティストとして知られるクリストら著名な作家をはじめ、国内外の多彩な顔ぶれによる約100点の絵画や造形物などが既に展示されており、9月1日のプレオープンに向けて準備が進んでいる。


旧醤油会館を改装して整備する「醤の郷現代美術館」で、インスタレーション(空間芸術)作品についてコンセプトを説明する石井代表=小豆島町馬木


 小豆島アートプロジェクトでは2018年10月、フランス人現代美術家ジョルジュ・ルースさんが馬木地区の古民家にアート空間を創造した「ジョルジュ・ギャラリー」が完成。床の間やふすま、欄間など和室の一部に金箔(きんぱく)を貼り付け、一定の場所から見るとつながって円形に見える作品は、19年の第4回瀬戸内国際芸術祭で人気を集め、以降も継続して一般公開されている。


猪熊弦一郎「ハワイの太陽」


 第2弾プロジェクトは20年1月に企画。1928(昭和3)年に小豆島醤油同業組合の事務所として整備され、その後町立図書館などとして活用されていた旧醤油会館を管理する町に働き掛け、10年間の借用契約を結んだ。小豆島アートプロジェクトが収集した現代アートと、小豆島にゆかりのある作家の作品を中心に展覧することにし、施設名は「醤(ひしお)の郷(さと)現代美術館」とした。

 プロジェクト開始に当たり、石井代表は親交のある日本人現代美術家に参加を呼び掛け。植松奎二さんら賛同した10人が醤の郷現代美術館向けのオリジナル作品の出品を決め、一部作家は島に出向いて滞在制作を行った。

 1年余りで収集した作品は約500点。小豆島のオリーブの絵を描いて天皇陛下に献上し、多くの画家に来島を勧めた猪熊や、高松市在住の現代美術家川島猛さん、世界的に活躍する村上隆さん、横尾忠則さんら、充実した作品群のうち当初は約60点を展示する。

 また、島ゆかりの作家としては、島内にアトリエを構えた古家新さんらのほか、瀬戸芸に参加した康夏奈さんらの作品も含め約40点を並べる。これら島ゆかりの作品は美術館が閉館した後も恒久的に島に残す方針で、収集にはクラウドファンディングで募集した資金を活用する。

 石井代表は「小豆島を題材にした絵を見た島の子どもたちが地域に誇りを持ち、島の未来を担う存在になってくれたらうれしい」と話している。

 オープン当初の総展示作品数は約110点となる見通し。作家の制作の様子を紹介する映像コーナーもある。美術館近くではレンガ倉庫を活用した企画展向けギャラリー「MOCA HISHIO ANNEX」も整備が進んでいる。グランドオープンは第5回瀬戸芸の開幕に合わせ、22年4月を予定している。

(四国新聞・2021/05/24掲載)


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