青空に緑が映える松の群生、その海側に広がる白い砂浜、見上げると源平合戦ゆかりの地・琴弾山がそびえる―。新型コロナウイルス感染対策で自粛生活が求められている今、豊かな自然と歴史の詰まった琴弾公園(香川県観音寺市)周辺に出掛けて心を癒やそう。暑くなるこれからの時季は、早朝や夕方がお勧め。もちろん「密」には気をつけて。


これからの季節に薄紫の可憐な花を咲かせるハマゴウ(香川の水辺を考える会提供)

これからの季節に薄紫の可憐な花を咲かせるハマゴウ(香川の水辺を考える会提供)


 駐車場への道中、まず目に入ったのは世界各地の珍しいコインや紙幣がそろう「世界のコイン館」。現存する巨大な銭形砂絵から称される「銭形の街」にちなんで建てられた同館では、国内外の貨幣にまつわる逸話も学べる。隣の市総合コミュニティセンターにはちょうさ(太鼓台)を展示。観音寺の風物詩、秋祭りの熱気が思い浮かぶ。

 車を止めたら、有明浜に続く松原へ。白砂青松百選に選定されているこの一帯には、松の古木が群生。中には樹齢400~500年のものもある。数え切れないほどのクロマツはどれも樹形が個性豊かで、思わず近づいてシャッターを切った。

 松の間を抜けると、いよいよ海岸に到着。有明浜には貴重な海浜植物が多数自生している。この日見つけたのは、先端が茶色の麦穂を思わせるコウボウムギ。これからの7~8月にかけてはハマゴウの薄紫の花が咲き乱れるそう。季節ごとに色を変える砂浜は、何度でも来たくなる魅力がある。

 日が傾き始める頃、寛永通宝が見下ろせる銭形展望台へ向かった。途中で少し寄り道。砂絵に注目しがちだが、木々の隙間から市街地を望める天狗(てんぐ)山展望台は隠れたビュースポット。三豊高等女学校(観音寺一高の前身)の初代校長、石井朝太郎の歌碑もたたずむ。

 ここまで来れば、銭形展望台はすぐそこ。目にすると健康で長生きし、お金に不自由しないと言われる巨大砂絵は、一度は拝んでおきたい。見事な絶景に、時間を忘れてしばし見入った。


見ると健康で長生きし、お金に不自由しないと言われる銭形砂絵

見ると健康で長生きし、お金に不自由しないと言われる銭形砂絵


 一息ついた後は、足を延ばして琴弾八幡宮へ。本殿は公園入り口の大鳥居から381段の石段を上った先。703(大宝3)年の春、嵐の過ぎた夜明けに海に現れた一隻の船から聞こえる琴の調べにうっとりした人々が、琴の主を船とともに山頂に引き上げ、神殿を建てて「琴弾八幡宮」として祭ったと伝わる。琴や笛などの芸が上達する「技芸の神様」、源平合戦の源氏勝利に関わった地であることから「勝利の神様」として親しまれ、多くの参拝者が訪れる場所でもある。

 帰り際、本殿前の石段を下りた先の「高灯篭」にも足を運んでみた。航海の安全のために江戸時代から同市の漁港・仮屋浦にあったものを地元の漁民が寄進。高さ6・5メートル、火袋約1メートルの巨大な石灯ろうは圧巻だ。四国霊場68番札所の神恵院や69番札所の観音寺、公園の緑を背景に架かる三つのアーチが美しい三架橋など、周辺には見どころが盛りだくさん。休日を使ってゆっくり巡ってみては。

(四国新聞・2021/06/12掲載)



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