香川漆芸の近代化に力を尽くした香川県高松市出身の漆芸家・磯井如真(1883~1964年)の作品を紹介する展覧会が香川県高松市紺屋町の高松市美術館で開かれている。昨年度新たに収蔵された衝立(ついたて)をはじめ、初期から晩年にかけての44点で如真の足跡を伝えている。20日まで。


磯井如真の多彩な技が見られる展覧会=高松市紺屋町、市美術館


 如真は香川漆芸の祖と称される玉楮象谷(たまかじぞうこく)(1806~69年)が手掛けた遺作の研究に打ち込み、その作風などから蒟醤(きんま)、彫漆(ちょうしつ)、存清(ぞんせい)の香川漆芸3技法を習得。伝統的な意匠に新しい感覚を取り入れた作品を生み出し、1956年には蒟醤(きんま)の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けた。

 展覧会は「供養之図 衝立」(33年)が新たに収蔵されたことを記念し、同館が「磯井如真の軌跡」と題して開催。この衝立は、砥(と)の粉と漆を混ぜた錆漆(さびうるし)の技法を使って観音像を描いたもの。背景にはアール・ヌーボーを思わせる植物の模様があしらわれ、如真が当時の流行を取り入れていたことがうかがえる。

 このほか、自ら編み出した「点彫り蒟醤」でアカシアの花を柔らかく表現した「蒟醤 筆筥(ふでばこ) 銀葉(ぎんよう)アカシヤ之図」(57年)や、彫漆と存清の技法で鳥や昆虫を緻密に描写した香合もあり、如真の技の幅広さが見て取れる。

(四国新聞・2021/06/13掲載)

高松市美術館


所在地 香川県高松市紺屋町10-4
開館時間 9:30~17:00
TEL 087-823-1711


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