香川県庁や小豆島など、主に県内で撮影を行った映画「Arc アーク」が25日から上映される。不老不死の体を得た女性が主人公の物語で、遠くない未来に起こるであろう人の生死を扱っている。ともすれば重くなりがちなテーマを、瀬戸内の自然美に加え、シナリオやカメラワークで実験的な作品に仕上げている。


県庁東館1階で撮影された映画「Arc アーク」の一場面 Ⓒ2021映画『Arc』製作委員会


 原作はヒューゴー賞を受けるなど注目を集める米作家ケン・リュウの短編小説。舞台は近未来の日本。主人公リマ(芳根京子)が後に師となるエマ(寺島しのぶ)に出会う。エマは故人を在りし日の姿のまま永久保存する施術を行うカリスマ的存在。エマの紹介でリマもその施術を行う仕事に就く。やがてその施術が発展して不老不死の技術が完成。その技術によってリマは世界で初めて不老不死となり、30歳の体のまま永遠の人生を生きていく―。

 監督は「蜜蜂と遠雷」などで高い評価を受けた石川慶。原作の魅力にほれ込んだ石川監督が映画化を構想、脚本家とともにオリジナルのストーリーに仕上げた。物語はSFチックだが、俳優たちの迫真の演技や手持ちカメラで撮るなど臨場感あるカメラワークの成果で、近未来をリアルに描き出している。

 「未来をドキュメンタリーのように撮りたかった」と石川監督。そのコンセプトに合ったロケ地が香川県庁だったという。県庁のロケハンで瀬戸内海にも魅力を感じたといい、「海がどことも違う。神話が息づくギリシアとの共通点もある気がする」ことから小豆島などでも撮影することになった。

 県内での撮影は2020年の2月中旬から約1カ月。石川監督は初めての地方ロケについて、「映画とその土地が切っても切り離せない関係になっていくのを感じた」と振り返る。「地元の方も温かく見守ってくれた。コロナが落ち着けば、あいさつに伺いたいところ」と話した。

 県内ではイオンシネマ高松東(高松市)と、イオンシネマ綾川(綾川町)で上映する。

(四国新聞・2021/06/21掲載)


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