香川県高松市の漆芸家北岡省三と、娘の道代による初の父娘展が高松市上福岡町の讃岐漆芸美術館で開かれている。箱や花器、額作品など計約60点が並び、それぞれの感性で生み出された独創的な芸術美が共演している。7月4日まで。


会場には北岡省三(右)と道代の意欲作が並ぶ=高松市上福岡町、讃岐漆芸美術館


 省三は漆芸の重要無形文化財保持者(人間国宝)だった故音丸耕堂らに師事。絵画的な作風が特徴で、2001年に県指定無形文化財保持者に選ばれ、19年には旭日双光章を受章した。道代は十数年前から省三の下で研さんを積み、日本伝統工芸展など全国公募展を中心に活躍している。

 今回、省三は新作を含む約30点を出展。このうち舟形の作品「乾漆(かんしつ)箱『月あかり』」は、香川漆芸の技法・彫漆(ちょうしつ)と蒟醤(きんま)の彫りを組み合わせたもので、揺らめく水面に映る満月を幻想的に描き出した。道代の「乾漆蒟醤箱『洗礼』」は新型コロナウイルスの収束を願った作品。暗い背景の中で金色のサギが飛び立つ姿を描き、コロナ禍における希望を表現したという。

 省三は「時代に合ったデザインを常に意識している。父娘の物作りの違いも感じてもらえたら」と話し、道代は「多彩な作品があるので自由な感性で鑑賞してほしい」と来場を呼び掛けている。

 入場無料。水、木曜日は休館。問い合わせは讃岐漆芸美術館、電話087-802-2010。

(四国新聞・2021/06/24掲載)



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