自然と存分に触れ合いたい。そんな気分にぴったりの場所が香川県「三木町 太古の森」だ。三木町の記念樹・メタセコイアが群生する敷地内で、心地よい風を感じながらゆったり落ち着いた時間を過ごした。

 隣接する町総合運動公園に車を止めて階段を下りると、長さ約70メートルの浮橋「水上アベニュー」が待ち構える。橋が浮かぶ山大寺池は、新さぬき百景や香川のみどり百選、農林水産省のため池百選の一つでもある名所。水面に映る嶽山(だけやま)が美しく、思わず足を止めた。


水上アベニューでは景色を眺めながら休憩もできる


 橋を渡り切った先、少し急な階段を上ると、かわいらしい看板が見えてきた。奥に広がる「みどりの丘」エリアには芝生が張り巡らされ、青々としたメタセコイアの木々が生い茂る。メタセコイアはヒノキ科の落葉高木で、高さ約35メートルにも成長する。1992年度の整備当時には約2700本が植えられ、今も秋には見事な紅葉が楽しめる。

 そんな巨木に負けず、目を引いたのは、恐竜トリケラトプスとディメトロドンのモニュメント。メタセコイアは数百万年前に恐竜たちとともに絶滅したと考えられていたが、三木町出身の植物学者・三木茂博士(1901~74年)が和歌山県内の地層から植物の化石を発見。41年に「メタセコイア」と命名、その4年後に中国で現存することが分かった。


ディメトロドンは撮影スポットとしても人気


 「生きている化石」と呼ばれる植物と恐竜たちが共存する景色はまさに太古の世界にタイムスリップしたようで、しばし時間を忘れて想像を膨らませた。ディメトロドンは中に入って楽しむこともでき、写真を撮るのにもお勧めのスポットだ。

 一息ついたら散策路を抜け、「記念の丘」エリアへ。ここには、見上げるほど大きなティラノサウルスのモニュメントに加え、三木博士のプロフィルやメタセコイアとの関連を説明したパネルも設置。その歴史を学ぶことができる。

 最後に訪れたのは、メタセコイアに囲まれた「太古の広場」。中央の石碑を取り囲むように、古代に生存していたと思われる動物のモニュメントが並ぶ。この日も気温が高かったが、周りの木々のおかげでこのエリアは涼しく、まるで別世界に来たような神秘的な空間をつくり上げていた。

 芝生の上でお弁当を食べたり、森林浴をしたり、写真撮影や野鳥観察を楽しんだり―。県内外からさまざまな人がやってきては、思い思いに自由な時間を過ごす。静かな自然の中で、時には日常を忘れてくつろいでみてはどうだろうか。

 メタセコイア命名からおよそ80年。三木町鹿庭の三木博士の生家跡には、博士ゆかりの品などが飾られた資料館がある。昨年には地元有志らでつくる「三木茂博士資料館を守る会」も発足し、さらなる盛り上がりが期待できそうだ。

 太古の森の問い合わせは、三木町生涯学習課 087-891-3314。

(四国新聞・2021/07/10掲載)



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