香川県小豆郡土庄町の土庄港近くの老舗菓子店の壁面に多摩美術大の学生たちが小豆島の名所や自然、文化をモチーフに絵を描き、2日に完成させた。エンジェルロードや寒霞渓、オリーブなどが建物いっぱいに色鮮やかに彩られ、学生たちは「個性を表現しながら島の魅力を伝えるものが出来上がった」と手応えを感じている。


建物壁面への絵画を完成させ、満足感を漂わせる神薗さん(中央)ら多摩美術大の学生たち=土庄町

建物壁面への絵画を完成させ、満足感を漂わせる神薗さん(中央)ら多摩美術大の学生たち=土庄町


 絵が描かれたのは、旅館業も兼ねている岡田長栄堂土庄港店。昨年5月、店側が島遍路のために宿泊していた「一般財団法人・人間塾」(東京)の仲野好重塾長に、西側壁面(縦13メートル、横14メートル)の劣化が目立ってきたことを雑談交じりに伝えると、「塾生に美大生がいるから絵を描いてもらってはどうか」と、同大美術学部彫刻学科の神薗峻也(かみぞのしゅんや)さん(22)を紹介された。

 神薗さんは塾生として2017、18年と2年連続で同店を利用し、16年には個人的に瀬戸内国際芸術祭を鑑賞するため来島しており、「島への恩返しにつながる」と制作を快諾。大学の油絵、日本画、グラフィックデザインの各学科に所属する同じ高校出身の後輩4人に協力を求め、春休み期間中に制作に当たることにした。

 5人は3月27日に来島。3階建ての建物壁面には店側の手配で既に足場が組まれ、神薗さんは“現場監督”として建物下から指示を送り、後輩たちが“職人”として制作を進めた。不慣れな高所でもそつなくこなし、予定通り1週間で仕上げた。

 26日には4度目の瀬戸芸が開幕し、多くの人たちが島を訪れる。神薗さんは「アートに目の肥えた人たちにも驚いてもらえるのでは」と納得の表情。同店の岡田里香専務(50)は「みんな真面目に楽しみながら描いてくれた。本当にありがたい」と感謝していた。

(四国新聞・2019/04/04掲載)



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