世界重要建築に香川県庁東館 NYタイムズ紹介、国内唯一の選出 時代背景や影響力評価
世界的な建築家・丹下健三氏が設計した「香川県庁舎(東館)」が、米ニューヨーク・タイムズ発行の雑誌の特集記事「世界で最も重要な戦後建築25作品」で紹介された。日本の建築では唯一の選出。完成時の時代背景や現在までの影響力などさまざまな観点から検討され、オペラハウス(オーストラリア)や国際宇宙ステーションなどと並んで価値が認められたという。
選考は、建築家でハーバード大大学院建築学部教授の森俊子氏や、第一線で活躍するデザイナーら計8人の専門家が担当。それぞれが公共、民間を問わず10カ所前後の建築物を候補に挙げ、議論を進めた。
1958年に完成した香川県庁舎は丹下氏の初期の代表作。柱と梁(はり)の組み合わせなど伝統的な寺社建築を思わせるデザインを採用しつつ、コンクリート打ち放しの造りなど当時の最先端の表現も取り入れている。
正面玄関(ピロティ)やロビー、南庭は香川県民に開かれたオープンスペースで、香川県生涯学習・文化財課によると、県庁舎の格式張ったイメージを変え、以降の国内の庁舎建築に大きな影響を与えたという。
今回の特集記事では、「第2次大戦後の日本の建築家にとっては、誇りある日本の文化に背を向けることなく、グローバルな現代性も受け入れ、社会とインフラを再構築していくことが課題だった」と指摘。香川県庁舎はその課題に対する丹下氏のアプローチで、「丹下氏の他の作品と比較しても、この傑作を超えるものはなかった」と結論付けた。
香川県庁東館はこれまでに、近代建築の保存に取り組む国際組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」の「日本の近代建築20選」にも選ばれている。
今回の選出を受け、香川県生涯学習・文化財課は「県庁舎の建築物としての価値が改めて評価された。広く価値を知ってもらうきっかけになれば」としている。
(四国新聞・2021/08/25掲載)