香川県高松市庵治町の四国本土最北端にある「竹居観音岬」。竹居観音寺の境内にあり、参拝客はもちろん、季節を問わず多くの観光客らが訪れる。幻想的な「だるま朝日」の撮影スポットとしても知られるこの場所へ、絶景を求めて車を走らせた。


ウォッチタワーから見る眼下の景色は圧巻=香川県高松市、あじ竜王山公園


 駐車場に着くと、一面に広がる海が目に入る。一帯は風光明媚(めいび)で静か。沖合には小豆島や高島など瀬戸内海の島々が見え、開放感もばっちりだ。まずは本堂でお参りを済ませ、奥の院へ向かった。

 奥の院にあたる「岩や」は荒波にさらされてできた自然の岩窟。生駒親正が1588(天正16)年に高松城を築城する際、岩窟内に馬頭観世音菩薩(ぼさつ)を祭り、城の鬼門の守り神としてあがめたそう。その後、松平頼重が城を増築拡張した時には勢至菩薩と十一面観世音菩薩を合わせ祭ったという。さまざまな願いを胸に、県内外から幅広い年代の人が訪れるそうで、取材に行った日も祈祷が行われていた。

 岩やまでの道中は、パワースポットとしても名高い「竹居観音岬」を通る。ここはだるま朝日の撮影場所としても有名だ。海面と大気の温度差によって水蒸気に光が屈折して現れる自然現象で、太陽が水平線上でだるまのように見える。三木町の写真愛好家・木村力さんによると、この辺りでは春分や秋分ごろの限られた時季にお目にかかれるそう。気象条件で形や色が変わるため飽きることがなく、「何もない水平線にすっと現れる太陽は表現できない感動がある」と教えてくれた。参拝客が多い寺の境内のため、撮影の際はマナー厳守で。


香川県内で唯一、庵治町で撮影できるというだるま朝日(木村力さん提供)


 庵治町と言えば、あじ竜王山公園も有名。「瀬戸の風景を体感できる」「自然とふれあえる」「アートと遊べる」のコンセプト通り、竜王山(標高239メートル)の山頂から眼下の海原が見渡せる広々とした園内には、至る所にアート作品が並ぶ。中でも、駐車場横の重厚感のある「セレナード」、少し不思議な形をした大きな「出会いの門」、瀬戸内国際芸術祭の参加作品「Watch Tower(ウォッチタワー)」が目を引いた。

 オランダの建築家ジョン・クルメリングさんが制作したウォッチタワーは、全体が腕時計の形。階段上の中央部分は文字盤のように数字が書かれ、縁に飾られた鳥の影の位置で時刻を示す日時計だとか。園内で一番高いこの場所からの景色は息をのむほどで、大型船が行き交う絶景を楽しむ家族連れの姿があった。

 問い合わせは竹居観音寺 087-871-4664、あじ竜王山公園087-839-2494

(四国新聞・2021/10/09掲載)

竹居観音寺


あじ竜王山公園



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