香川県坂出市沙弥島の東山魁夷せとうち美術館で、絵画の設計図とされる「下図」をテーマにした魁夷の作品展が開かれている。来館者は、構想を練ったりバランスを整えたりしながら作品を仕上げていく魁夷の制作過程に思いを巡らせている。4月3日まで。


魁夷の「月光」とその下図に見入る来館者

魁夷の「月光」とその下図(左端)に見入る来館者=香川県坂出市沙弥島、東山魁夷せとうち美術館


 日本画は途中からの修正に不向きなため、鉛筆で丁寧に下図を描いてから、輪郭を本紙に写す手順が大切にされている。作品展ではそんな日本画への関心を高めてもらおうと、同館が所蔵する魁夷の下図9点を原画などと併せて紹介している。

 山形県蔵王の樹氷を取り上げた「月光」の下図には、鉛筆で木々や雪原に陰影などを細かく描写。いずれもドイツが取材地の「湖岸」や「凍池」の下図は、升目が入った紙の上に描かれており、画面全体のバランスに注意を払って制作を進めた様子がうかがえる。

 このほか、2階では「自然を詠(うた)う、折々の風景」と題して、魁夷の風景画15点を紹介。作品横には関連する「万葉集」や「古今和歌集」「枕草子」のほか、魁夷と親交のあった川端康成の小説の一節を掲示しており、和歌や文学と共に、自然への賛美が込められた魁夷の作品を味わうことができる。

 7~21日の土日祝日は新型コロナウイルス感染拡大防止のため臨時休館。

(四国新聞・2022/03/07掲載)


東山魁夷せとうち美術館

東山魁夷せとうち美術館


所在地 香川県坂出市沙弥島字南通224-13
TEL 0877-44-1333


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