瀬戸内国際芸術祭2022開幕を前に、秋会期の会場の一つとなる香川県三豊市の粟島に向かう定期船乗り場の須田港(三豊市詫間町)で、常設展示作品がリニューアルされた。作品は新旧の待合所の建物に漁業用ロープを張り巡らせた同港のランドマークで、ロープの色をこれまでの白から、青と赤の2色に一新し、カラフルなデザインへと生まれ変わった。


青と赤の2色の漁業用ロープを張り巡らせる粟島の住民ら=香川県三豊市詫間町、須田港

青と赤の2色の漁業用ロープを張り巡らせる粟島の住民ら=香川県三豊市詫間町、須田港


 作品名は須田港待合所プロジェクト「みなとのロープハウス」。山田紗子建築設計事務所(東京)が設計を手掛けた。代表を務める建築家山田紗子さんは「粟島の魅力は自然と、そこに暮らしている人」とした上で、「海や空の青、太陽や人間の赤をテーマカラーとすることで、より自然と人間の営みのダイナミズムが直感的に伝わるように」とコンセプトを説明した。

 みなとのロープハウスはもともと、2013年の瀬戸芸の展示作品。「港に何気なく置かれているロープや網は、しなやかで強く、古くから人と海をつなぐ存在。素材の特長を生かして新旧二つの待合所をつなぎ、海の波や山並みに呼応するデザインを考えた」(山田さん)という。

 13年瀬戸芸終了後も常設展示していたが、潮風にさらされてロープの劣化が進んだため、昨秋から一時的に撤去。今年の瀬戸芸を機にリニューアルすることにした。新しく青と赤色の直径24ミリ、1巻200メートルの漁業用ロープ計8本を組み合わせて使用。素材もより耐久性の高いものに変更した。

 作業は3月23日から3日間、粟島の住民やボランティア、市職員が協力して取り組んだ。参加者は「せーの」「よいしょ」の掛け声を響かせながら、力いっぱいロープを引いて張り進めた。立ち会った建築設計事務所のスタッフが随時、山田さんに画像をスマートフォンで送って指示を受け、角度や張り具合を調整しながら二つの建物を囲っていった。

 最終日には山田さんも現地を訪れて細部を入念にチェックし、完成を見届けた。

(四国新聞・2022/04/12掲載)



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