劇団四季のミュージカル「ロボット・イン・ザ・ガーデン」の全国ツアーが各地を巡回している。秋までに高松市や観音寺市を含む全国63都市で計81公演を予定。主人公のベンと壊れかけのロボット・タングが心を通わせながら、世界を旅するハートフルな物語だ。新型コロナウイルスの影響を受けながらも稽古に励んできた出演者たちは、上演できる喜びをかみしめながら、「日常のささやかな幸せを全国の皆さんに届けたい」と意気込んでいる。


全国ツアーを前に抱負を語る(右から)ベン役の田辺真也、タング役の生形理菜、渡辺寛中=相模原市内

全国ツアーを前に抱負を語る(右から)ベン役の田辺真也、タング役の生形理菜、渡辺寛中=相模原市内


 「ユタと不思議な仲間たち」「夢から醒(さ)めた夢」など、数々のオリジナルミュージカルを手がけてきた劇団四季。今回の作品は英国の作家デボラ・インストールが2015年に発表した同名小説が原作で、20年に16年ぶりのオリジナルミュージカルとして舞台化され、東京で初演。その後、福岡や東京(再演)、京都で上演を重ねてきた話題作だ。

 アンドロイドが人間に代わり、家事や仕事をこなす近未来の英国が舞台。両親を亡くし、獣医師になる夢を諦めて無気力な日々を過ごす主人公のベン。ある日、四角い胴体に四角い頭をした、一見すると粗大ごみにしか見えない旧式のロボット・タングが庭に現れる。タングにアンドロイドにはない魅力を感じるようになったベンは、修理をするために米国や日本、パラオと各地を巡ることになる。

 原作本に描かれたかわいい姿が評判を呼んだタングだが、舞台化に当たっては演出家でデザイナー、パペットパフォーマーでもあるトビー・オリエが、原作の描写をベースに再現。身長は118センチと小さいながらも、舞台映えする愛らしいパペットに仕上げた。

 見どころは二人の俳優が頭と右手、胴体と左手と分担して、タングを動かすところ。タング役の渡辺寛中は「左右の手を同じ人が操作すれば、動きはスムーズだが、二人で操ることでロボット調のぎくしゃくとした動きが出る。座る動作一つとっても、二人で話し合って作り込んでいった」と打ち明ける。

 もう一人のタング役・生形理菜も「操作する私たちは客席から丸見え。でもそれが気にならないくらい透明になって、タングが動いているように演じたい。毎回、広さの違うステージで演じる不安はあるけれど、その空間を客席と共有できればうれしい」と話す。すぐに口ずさめるような音楽、ミュージカルでは珍しいロックのほか、訪れる国々をイメージしたさまざまな音楽や、おしゃれな振り付けも見逃せない。

 ベン役の田辺真也は「劇団四季では、語感や言葉を大切にした舞台で『生きるって、すてきなこと』というメッセージを皆さんに届けてきた。小さな喜びや出会いがたくさんある物語。ベンとタングが成長し、絆を深めていく様子をぜひ、見届けてほしい」と来場を呼びかけている。

 観音寺公演は8月28日・ハイスタッフホール、高松公演は同30日・レクザムホールで。チケット販売は19日から。両会場ともS席9900円、A席6600円ほか。

(四国新聞・2022/06/16掲載)


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