芥川の青春時代浮き彫り 生誕130年で企画展 菊池寛記念館・31日まで
今年生誕130年と没後95年を迎えた芥川龍之介にスポットを当てた企画展「菊池寛記念館で知る芥川龍之介」が、香川県高松市昭和町の同館で開かれている。学生時代の友人でフランス文学者の成瀬正一が書いた手紙のほか、菊池寛らとの交流を示す史料を通じて文豪の青春時代を浮き彫りにしている。31日まで。
芥川と成瀬、菊池は現在の東京大教養課程に当たる第一高等学校の同級生。芥川は東京帝大に進学後、憧れだった夏目漱石に認められようと菊池らに誘われて同人誌「第4次新思潮」の出版に関わった。同展では新思潮のほかメンバーの書簡や雑誌記事など約130点を展示している。
このうち、成瀬の史料を集めた章では学生時代の日記や手紙を紹介。当時の芥川について「なかなかの秀才で、話したら面白そうだけど黙っていて話さない」と印象をつづっている。
新思潮を巡っては「鼻」で脚光を浴びた芥川が離れていく一方、成瀬は「新思潮はフレンドシップのシンボル」として資金拠出を続けたという。文壇デビューの糸口が新思潮しかなかった菊池も継続を切望しており、成瀬の手紙からはメンバー間での温度差や立場の違いが見て取れる。
このほか、芥川が菊池の作品を校正したゲラ刷りの複製や、芥川が菊池について「兄貴のやうな心持」と記した雑誌記事も並び、両者の親密な関係がうかがえる。
会場では同展に関する自由研究向けのワークシートも配布している。入場料は一般200円ほか。問い合わせは同館、電話087-861-4502。
(四国新聞・2022/08/04掲載)