太平洋戦争末期に旧陸軍の落下傘部隊で使用されたパラシュートが、香川県高松市松島町の市平和記念館で展示されている。約20年前に同市の80代男性から同館に寄贈されたもので、一般公開は初めて。同館が当時聞き取った男性が体験した過酷な訓練の記憶、寄贈に込めた思いと併せて紹介している。12月28日まで。


旧陸軍の落下傘部隊が使用したパラシュートなどを紹介している企画展示コーナー=高松市松島町、市平和記念館

旧陸軍の落下傘部隊が使用したパラシュートなどを紹介している企画展示コーナー=高松市松島町、市平和記念館


 収蔵品の中から、スペースの問題などで展示する機会のなかった戦争遺品にスポットを当てようと企画。館内の企画展示コーナーに、パラシュートをはじめ、落下傘部隊に関連する資料など約20点を展示した。
 落下傘部隊は、飛行機からパラシュートで降下し、地上で任務を遂行する。爆弾や銃などを装備して地上に降り、敵機を撃破する戦力などとされていた。


1942年7月に栃木県で行われた落下傘部隊の演習の様子。天皇陛下に訓練成果を公開した

1942年7月に栃木県で行われた落下傘部隊の演習の様子。天皇陛下に訓練成果を公開した


 パラシュートが寄贈されたのは2000年。落下傘部隊の訓練の様子を収めた写真とともに提供された。男性は1939年に入隊し、41年に落下傘部隊に配属されて埼玉や宮崎で訓練を受けた。一度除隊したものの、45年に再び落下傘部隊に編入され、8月18日に予定されていたグアム島への出撃を前に終戦を迎え、パラシュートを背負ったまま帰郷したという。
 パラシュートは44年製で、最大直径6・6メートル。絹の布24枚をつなぎ合わせ、長さ約4・5メートルのひもが24本取り付けられている。「見ると悲しみがこみ上げてくる」と、普段目に入らない納屋の天井裏に保管していたもので、戦争を二度と繰り返さない平和な社会を願って寄贈することを決めたことが紹介されている。
 同館は「落下傘が攻撃の移動手段として使われていたことを伝える貴重な資料。戦争の悲惨さと平和の尊さについて考えてほしい」としている。開館時間は午前9時から午後5時まで。火曜休館。入場無料。問い合わせは市平和記念館〈087-833-2211〉。

(四国新聞・2022/08/17掲載)



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