子育て支援施設や図書館、平和記念館などが入る高松市の複合施設たかまつミライエ(高松市松島町)。4階のこども未来館科学展示室にある、巨大な化石に目がくぎ付けになった。大きな牙を持つナウマンゾウが、どうしてここに?


ナウマンゾウの化石に興味津々の子ども。将来は考古学者かな


 科学展示室では、子どもたちに身近な科学現象に興味を持ってもらおうと、物理分野や地学分野、生物分野などの展示が充実。中でも、大昔の高松にも生存していたナウマンゾウの実物大化石が一番人気だ。
 瀬戸内海全域では昔から、ゾウやスイギュウなどの化石が漁網にかかることが知られていた。25~2万年前にかけて日本は大陸と地続きで、瀬戸内海も陸地だったため、大陸にいたナウマンゾウやトウヨウゾウなどが、歩いてやってきたと考えられている。
 展示している全身骨格は、北海道でほぼ完全な骨格として発見されたもののレプリカ。巨大な体に比べても牙が大きく、雄では長さ約240センチにも達したという。顔の真ん中に穴が空いているため、一つ目の怪獣のようにも見えるが、実はこの穴は目ではなく鼻の穴だ。
 このナウマンゾウはミライエの前身・高松市民センターからの目玉展示。昭和50年ごろからあるといい、親世代も子どもの頃に目にしているかもしれない。
 ガラスケースの中にあるゾウの歯や前脚の化石は、瀬戸内海で発見された本物だ。大人の顔ほどもある臼歯は草鞋(わらじ)のような形。よく見ると貝殻が付いており、海に沈んでいたことがリアルに感じられる。江戸時代の人は太古の生き物のことなど知らないので、これを「竜骨」や「竜歯」と呼んでいたそうだが、どんなに不思議に思ったか想像するのも楽しい。ひと抱えはある巨大なアンモナイトや、県内で出土した恐竜化石も、子どもたちに大人気だ。
 片翼1㍍はありそうな羽を広げたカブトムシの模型の奥は、身近なところで見られる昆虫標本がずらり。近年昆虫離れが著しいといわれる子どもたちにも、興味を持つきっかけになりそうだ。
 吹き抜けから、階下のプレイルームで遊ぶ小さな子どもたちと保護者の姿が見えた。同館の櫃本富美子副館長補佐は「ミライエには図書館などもあるので入りやすいのか、おじいちゃんもよく来てくれます。複合館のよさですね」。
 帰り際、5階のプラネタリウム入り口にある大きな映写機や、平和記念館も見学した。ここでも実物資料がとても多く、大半は市民から寄贈されたものだそうだ。


プラネタリウムのロビーに展示されている映写機


 リモートやCGも便利だが、やはり目の前で大きさや質感を感じられる喜びは大きい。感染対策に気を付けながらまた来ようと、館を後にした。

(四国新聞・2022/09/10掲載)



関連情報