型にとらわれず、絵はがきのように絵と墨書で森羅万象を表現する「己書(おのれしょ)」の普及に努める一般社団法人「日本己書道場」(杉浦正総師範)が、女木島(香川県高松市)の豊玉依姫神社(日高良和宮司)に巨大な龍のオブジェを奉納した。全国各地の特産品や文言をしたためた円形の木製うちわをうろこに見立て、龍の全身を覆った力作が境内に鎮座。圧倒的な存在感が己書の魅力を発信している。


うねるように鎮座する龍のオブジェと日高宮司=高松市女木町、豊玉依姫神社


 同道場は2012年創立。名古屋市に総本部を構え、これまでに全国で2200人超の師範を輩出している。香川県内では約20人の師範がそれぞれ教室を開き指導に当たっている。
 オブジェは8月5~14日、女木島にある飲食店「お休み処龍潜荘」で開かれた全国の師範による作品展「日本己書道場 瀬戸内」の作品。5月にも同店で別の展示会をしており、店名に己書のモチーフとしてよく使う「龍」が入っていたことから、総師範のアイデアで制作する流れになったという。
 作品展の終了後に師範らがオブジェの保存先を模索していた際、見に来ていた同神社の日高宮司がオブジェの威容にひかれ神社に置くことを提案。14日に師範らが神社まで担いで運び、奉納に至った。
 木製うちわは直径約20センチ。オブジェは全長約20メートルで、神社の境内をうねるように鎮座している。流木を拾い集めてかたどった長さ約150センチの頭部には、硬質ウレタンにアクリル絵の具などを何重にも塗り重ねた青色の目が光る。胴体のうろこに見立てつなぎ合わせた木製うちわ約千枚には、各都道府県の特産品などを紹介する己書が全国各地の師範によって一枚一枚丁寧にしたためられている。


オブジェのうろこに見立てた木製うちわには郷土料理の「押し抜き寿司」や「おいり氷」を紹介した己書がしたためられている。


 高松市で教室を開く師範の中邑友香さんは、彩り鮮やかな郷土料理「押し抜き寿司(ずし)」を描き、「瀬戸の春魚 鰆(さわら)押し抜き寿司」と味のある書で紹介。名古屋からの出品が最も多く、天むすやきしめんなどご当地グルメをユニークな書で知ることができる仕組みになっている。
 日高宮司は「龍が来てから神社が華やかになり、参拝者も増えてうれしい限り。師範の方々とメンテナンスを施しながら2年後の辰(たつ)年までは持たせたい」と話している。

(四国新聞・2022/09/22掲載)



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