瀬戸内国際芸術祭の秋会期開幕(29日)を前に、香川県小豆郡土庄町の大部港フェリー乗り場2階の待合所に「妖怪アートギャラリー」が登場した。明かりを絞った空間に仏像彫刻の技法を駆使した本格的な妖怪の彫像が並び、来館者は“異世界”に足を踏み入れたような雰囲気の中、精緻に仕上げられた作品に見入っている。


滝夜叉姫をテーマにした迫力ある妖怪の彫像に見入る来館者=土庄町大部

滝夜叉姫をテーマにした迫力ある妖怪の彫像に見入る来館者=土庄町大部


 同町で妖怪をテーマにしたアートプロジェクトを展開する「MeiPAM(メイパム)」が、小豆島の玄関口の一つである大部港にアートを取り入れ、まちを活性化させようと企画。空きスペースの待合所の一部(約80平方メートル)を改装し、茨城県つくば市を拠点に妖怪彫刻家として活躍する武本大志さん(37)に作品制作を依頼した。
 作品は平将門の娘と伝わる五月(さつき)姫が、父を討たれ、一族を滅ぼされた怨念から滝夜叉(たきやしゃ)姫という鬼になり、妖怪を操って恨みを晴らそうとする伝説に基づいて制作。妖怪などの7体は高さ1・8メートル程度に仕上げるなど「等身大」にこだわり、悲壮感のある表情、弓矢や刀などを握って迫って来る様子を乾漆技法で丁寧に表現している。
 武本さんは、港を現世とあの世との「境目」と捉え、ギャラリー内の明るさや気温、静けさを調整。来館者との距離感を考慮した上で配置し、日常から壁1枚を隔てた場所にある異世界を演出している。
 近くの児童館から訪れていた土庄小2年、滝田絢愛さん(8)は「背丈が高く、手足を広げているので、今にも襲いかかってくるような感じがした」と驚きの表情。同、川崎沙莉奈さん(8)は「弓矢や刀を持つ手がリアル。目を離したら動きそう」と話していた。
 開設期間は不定。開館は午前8時から午後6時までで無休。入館無料。問い合わせはメイパム〈0879-62-0221〉。

(四国新聞・2022/09/26掲載)


MeiPAM

大部港フェリー乗り場



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